理事長談話「不活動法人の問題と、適正な管理運営の推進について」

昨今、不活動状態にある宗教法人を中心として、宗教法人格の売買とそれに伴う反社会的勢力による犯罪の温床化を懸念する各種報道があり、世間で注視され、問題視されています。宗教文化振興と宗教文化を支える宗教法人の適正な管理運営を推進する本連盟としては、このような状況を看過できないものと考えています。よってここに、談話を示し見解を申し上げます。

宗教法人制度は、日本国憲法第20条が国民に保障する信教の自由に基づき、宗教団体の担う活動が公益に資する意義深いものであるとの前提に立ち、宗教法人法の基本的理念である「自治の尊重」のもと、他の法人制度と比しても柔軟かつ自由度の高いものとして形作られていると認識しています。

加盟団体、及び、当連盟協賛5団体関係の宗教法人は、予てより適正な法人管理と運営に勤しまれており、日本宗教連盟理事長として深く敬意を表しております。ご承知のように18万件の宗教法人の収入の実態は約70%が500万円以下です。また各々の社寺教会での従務者は3名以内である法人が80%を占める、誠に小規模で零細な法人がほとんどです。

また、不活動宗教法人への対策については、宗教法人が不活動化する要因には日本全体の人口減少、少子高齢化と過疎化の進行など様々なものがあり、宗教法人側のみで解決することが難しい状況もあります。現在、包括宗教法人を中心にその解消に向けて取り組んでおられるものと拝察いたしますが、本連盟としても文化庁宗務課と連携を密にとり、活動再開の叶わない法人については国の協力体制の強化などを要請し、不活動宗教法人の減少に取り組んで参りたく存じます。

尚、一部では「宗教法人は税金を一切払っていない」「宗教法人法に宗教法人の売買を規制する規定はない」など、一般の方々に誤解を与えかねない報道もあります。そもそも宗教法人の税制は公益法人の税制度が適用されており、宗教活動の用に供される礼拝施設及び境内地には登録免許税や固定資産税が免除されています。その一方で、宗教法人といえども、その雇用する職員の給与に対する源泉徴収義務が課され、また宗教活動の用に供していない不動産には租税が賦課されており、かつ、目的に反しない限り行うことができるとされている収益事業を営む場合においては、他の営利法人等と同様、固定資産税や法人税等の納付を行っています。

更に、他の公益法人と同様に制度上、法人格の売買は不可能です。もし法人が売買されたという事案があれば、それは宗教法人法の趣旨を逸脱した行為であり、不当な手段を用いた「法人の乗っ取り」によるものである可能性があります。このように、遵法精神を欠いた一部の心無い者によって本来の宗教活動と相容れない形で宗教法人制度が悪用され、それによって大多数の善意の宗教法人までもが疑わしいものであるかのように誤認されることは、大変憂慮すべき事態であると思料いたします。

当連盟と協賛5団体関係の宗教法人としては、自らが率先して襟を正し、常日頃より適正な法人運営を心掛けることにより、このようなあらぬ批判を受けることなく、信者並びに宗教者の信教の自由を保障している現在の宗教法人制度を維持できるよう行動することが不可欠です。

そのため本連盟では今後も、公益性の高い宗教法人において役員が就任するにあたっては、「公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律」等の定めにある「役員等の欠格事由」を参考として、

・暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律第2条第6号に規定する暴力団員等

・宗教法人法第81条第1項第1号及び第2号前段に規定する法令に違反して著しく公共の福祉を害し、又は、宗教団体の目的を著しく逸脱したものとして解散を命ぜられた法人の役員であった者

を役員とすることは引き続き控えるよう、重ねて周知して参りたく存じます。

健全、かつ、適正な宗教活動及び法人運営に勤しまれている5団体の関係の宗教法人におかれては、引き続き氏子、檀家、信者、信徒に信仰者として寄り添っていただき、より適正な法人運営にお努めいただきますようよろしくお願い申し上げます。

令和5年5月22日

                        公益財団法人 日本宗教連盟

                         理事長  宍野史生