鳥取県による宗教法人の財務情報開示について(9)

鳥取県による宗教法人の財務情報開示について(9)―日宗連からの質問

平成16年11月29日

文化庁長官 河合隼雄 殿

財団法人 日本宗教連盟
事務局長 斎藤謙次

鳥取県における「宗教法人提出書類」の情報開示に関する質問

 日本宗教連盟は、教派神道連合会、全日本仏教会、日本キリスト教連合会、神社本庁、新日本宗教団体連合会の5団体で構成する財団法人で、昭和21年の設立以来、日本国憲法が規定する信教の自由と政教分離の精神のもと、宗教文化の振興を図るべく諸活動を展開しております。
 さて、本連盟では、昨年、鳥取県内の宗教法人が提出した事務所備付け書類の写しを、鳥取県が同県情報公開条例により開示して以来、憲法が規定する信教の自由、宗教法人法、情報公開法及び各都道府県の情報公開条例、地方分権一括法、地方自治法等との関係について検討してきました。
 宗教法人が所轄庁に提出した書類について、文化庁は「提出書類は不開示情報」との見解を示していますが、鳥取県は「提出された書類は公文書となり、条例に従い開示する」との見解に立ち、双方の法解釈と問題把握は平行線のままとなっております。
 また本連盟では、片山善博鳥取県知事宛に、鳥取県情報公開条例による宗教法人提出書類の情報開示と宗教法人法第25条3項が規定する閲覧請求との整合性を質問したところ、鳥取県からは「立法政策の問題として解決されるべきもの」との回答が示されました。
 上記の見解と回答をふまえ、地方自治法上の法定受託事務と自治事務の規定、宗教法人法第25条が定める宗教法人の事務所備付け書類の閲覧(同条3項)、備付け書類の写しの提出(同条4項)、提出書類の取扱い(同条5項)と情報公開法及び各都道府県の情報公開条例による情報開示との整合性について下記のとおりおたずね致します。
 つきましては12月15日までに文書にてご回答下さいますよう、お願い申し上げます。 

<質 問>

1 宗教法人法第25条3項による閲覧請求と情報公開法及び各都道府県の情報公開条例による情報開示との整合性についておたずねします。
 宗教法人法第25条3項では、宗教法人の事務所備付け書類の閲覧請求の対象者を「信者その他の利害関係人」、「閲覧することについて正当な利益があり、かつ、その閲覧の請求が不当な目的によるものでないと認められる者」と規定しております。
 しかしながら、鳥取県では宗教法人が提出した文書は、県が保有する他の公文書と同様に位置付けられ、同県情報公開条例により開示されました。現行の情報公開法及び各都道府県の情報公開条例では、閲覧請求の対象者に「信者その他の利害関係人」以外の人々をも含んでおり、鳥取県情報公開条例では、「県に関係する者は何人(県内に住所を有する者等)も開示請求ができる」と規定しております。
 この結果、宗教法人法第25条3項に盛り込まれている、各宗教法人が「信者その他の利害関係人」以外から閲覧請求があった場合にこれを拒否する権利、並びに「閲覧することについて正当な利益があり、かつ、その閲覧の請求が不当な目的によるものでないと認められる者」以外から閲覧請求があった場合にこれを拒否する権利、すなわち各宗教法人が「閲覧請求を自主的に判断していく権利」が侵害されることが明らかとなりました。
 文化庁はこの事態をどのように捉え、解決をはかられるのか、お考えをお聞かせ下さい。

2 地方自治法上の法定受託事務と自治事務の規定をふまえ、宗教法人法第25条が規定する宗教法人の事務所備付け書類の閲覧(同条3項)、備付け書類の写しの提出(同条4項)、提出書類の取扱い(同条5項)と情報公開法及び各都道府県の情報公開条例による情報開示との整合性についておたずねします。
 文化庁は、鳥取県が宗教法人提出書類の情報を開示した後、平成16年2月19日、各都道府県知事宛に「宗教法人法に係る都道府県の法定受託事務に係る処理基準」を通知しました。一方、鳥取県は、3月3日、文化庁次長に宛てた同処理基準についての照会の中で、「宗教法人から提出された書類の開示・非開示などの管理事務は地方自治法上法定受託事務から除かれており、県の自治事務であることは明らか」との見解を示しています。
 また、文化庁は、3月31日、鳥取県から出された照会への回答で、「宗教法人から提出された書類の開示、非開示などの管理事務は、法定受託事務の処理と密接不可分の関係を有する情報の管理であることから、処理基準の中でその取扱いについて定めたもの」との見解を示しています。
 すなわち、宗教法人法第25条5項(提出書類の取扱い)について、文化庁は、同法25条4項(備付け書類の写しの提出)と連動し、「法定受託事務の処理と密接不可分の関係を有する情報の管理」との見解ですが、鳥取県は、「地方自治法上法定受託事務から除かれており、県の自治事務」との見解に立っております。
 このように文化庁と鳥取県の見解と法解釈は平行線となっておりますが、文化庁は、地方自治法上の法定受託事務と自治事務の規定をふまえ、宗教法人法第25条が規定する宗教法人の事務所備付け書類の閲覧(同条3項)、備付け書類の写しの提出(同条4項)、提出書類の取扱い(同条5項)と情報公開法及び各都道府県の情報公開条例による情報開示との整合性をどのようにはかられるのか、お考えをお聞かせ下さい。

以 上