「文化芸術推進基本計画(第1期)の策定について(中間報告)」への意見

「文化芸術推進基本計画(第1期)の策定について(中間報告)」への意見

 

 

このたびの「文化芸術推進基本計画(第1期)の策定について(中間報告)」(以下、「中間報告」という)を読みましたところ、その全般において、「信仰」や「信仰文化」及び「宗教」や「宗教文化」といった文言が見受けられません。

日本に限らず、世界においても、各国の「文化芸術」を語るには切り離して考えることができないものに、「信仰・宗教」があり、それは長い歴史を見ても明らかな事実であります。宗教は、古来、生活や伝統、文化、芸術に溶け込みながら、いのちの尊厳や思いやりの心を育み、豊かな人間性を涵養し、人々の精神面を支え、社会の規範としても役割をはたして来ました。

現に、文化財や伝統芸能の中には、信仰的・宗教的価値が結実し、長い歴史を経て国宝や重要文化財としての意義を認められているものが数多くあります。このことから、同基本計画の策定にあたっては、「信仰・宗教」と密接に関係した「文化芸術」があることをよくよくご理解いただき、憲法第20条及び第89条の宗教条項(いわゆる、政教分離の原則といわれるもの)を厳しく運用するあまり、過剰に阻害されることなく、文化芸術の保護の観点から公平公正にご配慮くださるよう強く要望いたします。

なお、「中間報告」3頁、2.昨今の我が国の文化芸術を取り巻く状況変化(新しい文化芸術基本法の成立)の、2つ目に、「文化芸術の継承,発展及び創造には文化芸術団体や文化施設が積極的に役割を果たすべきであるとともに,文化芸術の推進のためには国,独立行政法人,地方公共団体,文化芸術団体,文化施設,企業等の民間事業者等の関係者相互の連携及び協働が重要である。」とあります。この、「民間事業者等の関係者」には、宗教文化等を管理する法人や、宗教法人、宗教団体が、当然含まれているものと理解いたしますが、連携や協働には、「宗教関連施設」の協力が欠かせないものであることを認識し、策定予定の「基本計画」の中に、具体的な言及として「宗教」ないし「宗教文化」という表現が明記されますようご配慮いただきたく重ねて要望いたします。

 

具体的事例として、平成25年に登録された世界遺産に、「富士山―信仰の対象と芸術の源泉」があり、世界遺産委員会決議(対訳)にも、「これらの宗教的関連性は、その完全な形姿としての展望を描いた無数の芸術作品を生み出すきっかけとなった」と明記されています。

 

平成30(2018)年1月10日

公益財団法人 日本宗教連盟

理事長 芳村正德