令和2年度 年頭所感

「東日本大震災から十年を迎えて」

                   公益財団法人 日本宗教連盟

                   令和2年度理事長 戸松 義晴

 

ご挨拶に当たり、新型コロナウイルス感染症(COVID―19)に感染された方々のご回復と、亡くなられた方々への哀悼の祈りを捧げ、また、医療従事者やエッセンシャルワーカーの皆様が感染せずに任務を全うできますよう、祈念いたします。

令和3年3月11日。東日本大震災から10年をむかえます。

被災された皆様には、10年の年月を長く感じる方も、短く感じる方もいらっしゃると思います。なかには、その日から時が止まってしまった方もいらっしゃるのではないでしょうか。10年という節目を迎えたいま、宗教界では、被災された方や犠牲になられた方、大切な人を亡くされた方、震災の被害により今でも苦しみを背負っておられる方々に、私たち宗教者は思いを巡らせて追悼の祈りを捧げます。

コロナウイルス感染症の影響で、被災地での追悼や慰霊供養の行事も縮小傾向にありますが、東日本大震災と原子力発電所の事故の経験を風化させずに未来へと語り継ぎ、災害に備えることで、同じような悲しみを生まないよう祈りを繋げて参ります。

 

【平和な世界の実現を祈念して】

さて、コロナ禍で暗いニュースが続くなか、令和3(2021)年は、国際平和につながる歴史的な年となりました。世界平和実現のために、平成29(2017)年に核兵器の開発、保有、使用を禁じる核兵器禁止条約が国連で採択され、令和2年10月24日、条約に批准する国と地域が50に達し、令和3年1月22日、条約が発効されました。

原爆投下から75年もの長い年月を経た今も、被爆者の辛く苦しい体験と平和実現への強い願いは、人々に引き継がれてきました。核兵器使用による悲惨な状況とは、被爆者のみならず、原爆投下直後に爆心地に入った人々でさえも強い放射線の影響で被爆するという事実であり、被爆二世にも健康被害、差別などの影響が及ぶことでもあります。

私たち宗教者は、これまでも恒久平和を希求し、真に平和と言える社会の実現のために協働してまいりました。人類が争うことなく、一人ひとりがいのちを大切にして平和に暮らしていけるように祈り、また、人々に平和について説き平和を祈る心を伝えていくことが、宗教者の使命であります。

世界で唯一の戦争被爆国日本の宗教者である私たちは、ここに改めて核兵器のない平和な世界の実現を祈念いたします。

当連盟では、信教の自由の尊重と擁護、宗教文化の振興と交流を目的とする諸活動を行っております。そのなかで、SDGsの掲げる「誰一人取り残さない」社会の実現を、宗教界を挙げて進めていく覚悟であります。現在日本社会は、コロナ禍で檀信徒や、氏子崇敬者、信者信徒のみならず、世界の多くの人々に甚大な被害が出ております。皆様と共に力を合わせて、このコロナ禍が終息し、平和な日々が一日でも早く訪れることを心より祈念し、ご挨拶といたします。

     (全日本仏教会理事長)