第1回 宗教の公益性に関するセミナー【要旨】

第1回 宗教及び宗教法人の公益性に関するセミナー

「国税通則法改正問題を考える―宗教法人の運営と税務調査への対応」要旨

 

納税環境整備に関する「国税通則法」等の改正により、平成二十五年一月一日から実質的には税務調査における国税庁の調査権限が大幅に強化された内容となった。

こうした状況を踏まえ、平成二十五年一月二十五日、増上寺三縁ホールにおいて、第一回宗教法人の公益性に関するセミナー「国税通則法改正問題を考える︱宗教法人の運営と税務調査への対応」を開催し、税務調査における質問検査権の対象範囲や提出された帳簿書類やその他の物件の留置きなど、国税通則法改正によって提起されている諸問題を考え、現代社会における宗教法人の自律的運営から税務調査への対応、さらに今後予想される課題等を考察した。

おもに宗教法人事務担当者(専門職)を対象とした内容であったが、関係者の関心も高く百六十名余の参加があった。

 

石村耕治・白鷗大学教授が「国税通則法改正と税務調査への対応」について講義。税務調査の手続きの流れを、調査前・調査時・調査終了後・再調査と段階を追って整理し、また調査の性質から、強制調査・間接強制の伴う任意調査・行政指導として行われる純粋な任意調査(法定外調査)とに分類して、基礎的な手順や留意すべき点を確認した。

今回の「国税通則法」の改定では、今まで所得税、相続税、酒税等々のように個別の法律で定められていた税務調査のうち、「課税処分のための調査」に関する質問検査権について規程が集約化されたことになる。

調査に際し、帳簿書類の提示や提出と、留置きの規定が法律で定義され、実質的には課税強化されたことにより様々な問題が考えられるが、宗教法人の「俗の面」に対する税務調査に対し、一例として過去帳のような「聖の面」に関するもの、とくに壇信徒のプライバシー等に関するものであれば、職業の守秘義務に係るものとして提示・提出に応じないことに「正当な理由」があるものとの見解が示された。その他、課税庁に修正申告の勧奨ができる権限が認められたが、修正申告を行うと後日不服申し立てができないことにも留意する必要がある。また、調査と非調査にあたる行政指導とを峻別する基準が関係通達に明記されたことは留意すべき重要事項である。他にも調査において具体的に考えられる問題点について、テキスト(『宗教法人の税務調査対応ハンドブック』石村耕治編・清文社二〇一二年発行)から紹介された。

 

阿部徳幸・関東学院大学教授・税理士が「国税通則法改正と宗教法人への影響」について講義。はじめに、よく見られる「お尋ね」書類について具体的に説明があった。これらの文書を提出する法的根拠や、税務調査との関係についても詳しく解説。収益事業に関わらず給与所得の源泉税や、消費税の納入に関する調査が宗教法人でも多く行われている実態も紹介された。また、宗教法人の会計処理においては普段から、法人会計と個人会計を厳正に分離して、法人の収入・支出を帳簿に正しく記録し、帳簿書類を整理・保存することが大切である。今後は、消費税が重視される傾向があるため、その点も留意する必要がある。

以上の講義の後に、会場から受けた質疑に対して講師から具体的な解説をいただき、盛会のうちに終了した。

 

公益財団法人日本宗教連盟

第1回宗教及び宗教法人の公益性に関するセミナー

「国税通則法改正問題を考える―宗教法人の運営と税務調査への対応」要旨 (文責事務局)

平成25年1月25日・会場 大本山増上寺 三縁ホール

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