平成31/令和元年度事業報告(概要)

公益財団法人 日本宗教連盟

平成31/令和元年度事業報告(概要)

(平成31年4月1日~令和2年3月31日)

 

Ⅰ 事業

第1  概要

事業の状況

当連盟は、宗教界の連合組織として、神道・仏教・キリスト教・新宗教等の垣根を越えて、信教の自由の尊重と擁護のもと、宗教文化を広く社会に振興・普及することで、道義に基づく豊かな社会の形成に寄与するとともに、もって世界平和の確立に貢献する活動を展開している。

当事業年度も上記事業趣旨に基づき、教派神道連合会、全日本仏教会、日本キリスト教連合会、神社本庁、新日本宗教団体連合会、及び、その他の団体との緊密な提携を図り、公益目的事業である「宗教文化振興事業」を柱に、調査研究活動、講座・セミナー開催活動、広報普及活動などを展開した。

なお、当年度については、令和元(2019)年12月から世界規模で感染が拡大した「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)」の日本国内の感染状況により、当連盟も事業実施を延期するなどの影響を受けた。

 

[ 信教の自由の尊重と擁護並びに宗教文化の振興・普及に関する事業 ]

 

第2  各活動の実績

1. 調査研究

(1) 信教の自由の尊重と擁護並びに宗教文化の振興に関する調査研究の実施

ア. 宗教文化を振興するための宗教法人の公益性と信教の自由に関する調査研究の実施(A)

(ア) 宗教法人実務研修会における講義のための調査研究

文化庁・開催都道府県主催の同実務研修会における講義資料作成のため、宗教法人の公益性に関する研究協議を行った。

(イ) 宗教法人の事業活動に関する調査研究

・「寄附・お布施・献金のキャッシュレス化に関する学習会」の開催による調査研究

政府の「観光立国」推進や、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会の開催に合わせたイベント実施等によって、近年、日本を訪れる外国人観光客は増加しており、国内での消費活動(インバウンド消費)も増加の傾向があった。(新型コロナウイルス感染症の世界的な感染拡大以前の状況)また、令和元年10月の消費税増税と軽減税率制度の導入により、政府は消費の落ち込みを防ぐために、キャッシュレスによる簡便な決済手段を使うことでキャッシュバックを行うキャンペーンを展開するなど、キャッシュレス化推進が話題になった。

当連盟では、一部の宗教法人でも導入事例がみられるという「キャッシュレス決済」とはどのようなものなのか、現時点で、キャッシュレス化の状況が分からないこともあり、先ずは、当法人の関係者と宗教関係事務担当者を対象とした学習会の開催を企画し、キャッシュレス化の基本と概要、宗教法人による導入事例、また、導入による利点や問題点について論点整理を行うことを目的として「第1回寄附・お布施・献金のキャッシュレス化に関する学習会―利点と問題点、目下の課題の検討から」を開催。現状と課題の論点整理を行った。

日時  令和元(2019)年8月20日(火)午前10時~正午

会場  明照会館4階 第2会議室

講義  「寄附・お布施・献金のキャッシュレス化に関する学習会

―利点と問題点、目下の課題の検討から」

講師  石井研士 國學院大學副学長・神道文化学部教授

対象者  日本宗教連盟 幹事、オブザーバーとして、各団体担当者

参加者  20名

・ 「新型コロナウイルス感染症」の感染拡大による宗教文化施設や宗教法人への影響に関する情報交換と被害状況調査の継続実施

新型コロナウイルス感染症の国内の感染拡大に伴い、令和2年2月下旬頃から、一部の宗教法人施設でも、感染源とならないよう対策が取られてきた。当連盟では、宗教法人施設・宗教文化施設等への様々な影響について、5団体による意見交換、並びに、情報交換を電話やEメール等で継続して行っている。(令和2年度にかけて継続実施)

1)緊急事態における宗教法人施設の対応についての意見交換

2)新型コロナウイルス感染症が宗教法人に与える影響の調査と、緊急事態における宗教法人施設の対応について

(ウ)第243回アメリカ独立記念日レセプションへの参列

当連盟は、日本における神道・仏教・キリスト教・新宗教等の垣根を越えて事業活動を行う公的な団体であることから、過去には、駐日米国大使館を窓口として、米国国務省民主主義・人権・労働局の担当官が事務局へ来訪し、日本における信仰の自由についての見解に関する調査が行われている。

同レセプションには、昨年の「信教の自由に関する大臣会議」への出席者に対して招待があったため、幹事はレセプションに出席して米国文化や国際関係の状況などについて情報を得た。

イ. 宗教文化を振興するための宗教法人実務研修会等の推進 (B)

(ア) 文化庁並びに都道府県主催「令和元年度宗教法人実務研修会」への講師派遣と、評価企画会議等委員派遣の協力

宗教法人の適正な管理運営に資することを目的として宗務行政への各種協力を行い、これらの活動をとおして信教の自由の尊重と擁護、並びに、宗教文化の振興と普及に努めた。

・ 「令和元年度宗教法人実務研修会」各会場に講師として事務局長・幹事が出向し、「宗教法人の公益性」について講義を行った。(全9会場)

1)北海道・東北地区(11月13日、秋田県)

2)第1回関東甲信越静地区(9月12日、山梨県)

3)第2回関東甲信越静地区(11月5日、千葉県)

4)第1回近畿・中部地区(10月2日、富山県)

5)第2回近畿・中部地区(10月8日、和歌山県)

6)第1回中国・四国地区(10月10日、広島県)

7)第2回中国・四国地区(11月26日、鳥取県)

8)第1回九州地区(9月4日、鹿児島県)

9)第2回九州地区(11月7日、熊本県)

・ 「令和元年度宗教法人実務研修会評価企画会議」へ事務局長と幹事を委員として派遣した。

(イ) 文化庁主催、令和元年度開催「宗教法人制度の運用等に関する調査研究の協力者会議」への協力

・ 「令和元年度宗教法人制度の運用等に関する調査研究協力者会議」が開催され、日本宗教連盟関係5団体(教派神道連合会、公益財団法人全日本仏教、日本キリスト教連合会、宗教法人神社本庁、公益財団法人新日本宗教団体連合会)に対するヒアリング行われた。

(ウ) 文化庁主催「令和元年度不活動宗教法人対策推進会議」への委員派遣の協力

・「令和元年度不活動宗教法人対策推進会議」については、新型コロナウイルス感染拡大防止のため会議開催が書面による開催に変更となり、事務局長が協力した。

(エ) 文化庁主催各種研修会への講師推薦協力

・ 文化庁主催「令和元年度都道府県宗教法人事務担当者研修会(認証事務・不活動宗教法人対策)」の講師推薦の協力を行った。

ウ. 宗教文化を振興するための協賛団体(教派神道連合会、全日本仏教会、日本キリスト教連合会、神社本庁、新日本宗教団体連合会)、並びに、関係諸団体との連絡・協議・調査研究等の実施 (C)

(ア) 協賛団体との連携協力による調査研究

・ 協賛団体(5団体)との連携によって、宗教・宗派の垣根を越えて信教の自由の尊重と擁護、並びに、宗教文化の振興と普及を行っている。本年度は次の内容について研究並びに協議を行った。

令和元年台風による豪雨災害と、宗教法人の災害対応に関する諸問題や、2月頃から国内での感染が拡大していった新型コロナウイルス感染症による宗教法人の状況や今後起こりうる問題について、関係5団体との意見交換により情報収集を継続して行っている。

また、宗教文化の振興と保護の観点から、宗教に関する公教育のあり方や、信仰・宗教に根差した文化財の保護、宗教法人の活動や、災害対応、防災などにおける政教分離の解釈の問題等、宗教法人をめぐる諸問題に関して要望事項をまとめ、自由民主党主催・政策懇談会に出席し、意見交換を行った。

その他、信仰や宗教、宗教文化振興の観点から「持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)」を考えるセミナーの開催について、引き続き様々な議論を重ねつつ、シンポジウムの実施の企画を行った。

なお、文化庁・宗務課を交えて、宗教を取りまく諸問題に関する意見交換や情報収集を目的とした連絡会を行った。

(イ) 関係諸団体及び、官庁との連携協力による調査研究

・ 一部の宗教法人が厚生年金に未加入である問題について、前年度に引き続き5団体で情報共有と協議検討を行った。

・ 9月25日より順次各地で開催となった国税庁主催の「消費税軽減税率制度の説明会」について、文化庁宗務課より周知依頼があり、5団体をとおして、当連盟関係団体、並びに、関係者に対して周知を行った。

・ 公益財団法人全国教誨師連盟主催「第54回誨師中央研修会」教誨事業功労者表彰式典に理事長が参列し、宗教教誨事業功労者12名に感謝状と記念品を贈呈した。また、表彰式典への参列や、同連盟関係者、参加した教誨師との交流、及び、同連盟から提供される資料をもとに、宗教教誨の現状や犯罪の傾向等の社会問題についても情報を得ている。

・ 文化庁宗務課の令和4(2022)年の京都移転を前に、宗務課が事務処理や会議運営等の試験をするため、テレビ会議試験が実施され出席協力した。また、FATF調査に関する関係宗教法人の協力を求める依頼があり、同調査協力宗教法人として日本キリスト教連合会加盟の宗教法人を推薦した。

・ 法務省保護局更生保護振興課、並びに、更生保護振興課地域活動推進係の担当者が当連盟に来訪し、「保護司」減少の実態の説明があり、担い手の推薦や育成について5団体への協力を求める相談があった。本依頼については、関係5団体へ協力を要請し、各団体で対応することとした。

・ 環境省環境再生・資源環境局より、コンタクトレンズ使用済み空きケースの回収による環境保護活動への協力依頼があり、SDGsの観点から、関係5団体に対し同活動の推進について協力の依頼を行った。

・ ローマ・カトリックのフランシスコ教皇が11月23日から26日までの日程で来日し、11月24日には広島平和記念公園で平和のための集いが催行され、日本の宗教界から宗教者代表に対して招待があり、各団体で対応。諸宗教間対話が行われた。また、11月25日には、東京ドームにおいてフランシスコ教皇ミサが執り行われ、関係者が参列した。

・ 法務省主唱、第70回「社会を明るくする運動」について、協力団体として広報推進の協力を行った。

・ 令和2年7月24日の開会式から8月9日まで開催される予定であった、東京2020オリンピック競技大会、並びに、8月25日の開会式から9月6日の閉幕まで開催される予定であった、東京2020パラリンピック競技大会に関連して、東京都宗教連盟理事長から、日本宗教連盟と関係5団体に対し、宗教的観点から大会のサポートと、宗教者・通訳含む一般ボランティアの派遣等について協力の要請があった。しかし、新型コロナウイルス感染症の感染拡大により同大会は令和3(2021)年の開催延期となったため、改めて対応することとなった。

 

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2. 講座・セミナー

(1) 宗教文化並びに信教の自由に関するシンポジウム及び講演等の開催の企画

ア. 宗教法人の公益性に関するセミナー実施の延期とシリーズ企画 (C)

(ア) 第5回宗教法人の公益性に関するセミナーの開催の企画と、次年度への実施延期

・ シリーズ「宗教×SDGs」第1回「宗教界で進める『こころのユニバーサルデザイン』」は、3月25日、浄土宗大本山 増上寺・光摂殿を会場に、広く一般を対象として開催することを企画。しかし、新型コロナウイルス感染症の感染拡大と、2月26日に発表された内閣総理大臣のイベント等の自粛要請を受けて、今年度の実施は断念し、次年度への開催延期を決定した。開催の時期は、講師や参加者の健康と命のリスクを考え、新型コロナウイルス感染症の感染拡大状況などを見据えて、改めて日程を決めることとした。

[シリーズ「宗教×SDGs」第1回開催企画内容 ]

国連が2030年までの達成を呼びかけている「持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)」は17のゴールのもと、169のターゲット、232の指標から構成されている。それらは、多様性と包摂性のある社会の実現、地球上の誰一人として取り残さない(leave no one behind)社会を目指し、各国政府や市民社会、民間セクターを含む様々な主体が連携して取り組むことが求められている。

SDGsに掲げられている目標には、日本人にはなじみやすいものがあり、なかでも、古来、宗教や宗教文化に根差した活動は、自然との共生や、人々に寄り添う救済活動、地域社会への貢献など、SDGsの目指す方向性に添うものであるといえる。

今回から、シリーズ「宗教×SDGs」を掲げ、宗教文化や宗教に根差した活動の観点から、SDGsを一般の方にも親しみやすく紹介し、自らの行動に生かせるような内容とすることを目的としている。

3月25日に予定されていた、シリーズ「SDGs」第1回は、「宗教界で進める『こころのユニバーサルデザイン』について。

多様な人々が社会に参加するうえでの障壁(バリア)をなくす「バリアフリー」は良く知られているが、ユニバーサルデザインとは、年齢や障害の有無、体格、性別、国籍などにかかわらず、誰にもでも優しく、わかりやすくて利用しやすい、建物や乗り物、案内表示、日常の器具や道具等々のデザインのことである。

一部の宗教施設では、手すりやスロープなどを設置してバリアフリー化を進めているが、もともと文化財に指定されることが多い寺社仏閣、教会は、伝統的な石段や石畳などの景観を容易に変えることができないため、対応の難しさが問題となる。それでは、ユニバーサルデザインにかなっている、誰にでも開かれた宗教施設にすること、そして、誰もが宗教文化に触れて親しめることを実現するのは難しいことなのだろうか。

近年、行政や企業で推進している「心のユニバーサルデザイン」は、施設の設備や表示などを改善するだけで達成されるものではない。「誰にでも優しい」「誰一人取り残さない」ことを目指すには、そこで働く人々が、多様な人々を思いやる心をもって誠実に対応することが欠かせないものである。

シンポジウムでは、「バリアバリュー=障害を価値に変える」を提言し、多様な方々の視点に立ち行動する企業から講師を招き、具体的事例を紹介いただきながら、日常の宗教活動や一人ひとりの心がけのポイントなど、正しい関心と知識、情報を発信して、それぞれの豊かな生活に役立てることを目的とする。(次年度へ延期)

(イ) 宗教法人の公益性に関するセミナーの第6回以降の開催の企画

・ シリーズ「宗教×SDGs」の第2回は、「災害時における行政と宗教法人の連携を考える―防災・減災、被災者支援活動―」(仮題)をテーマとて、次年度以降開催の企画の協議、検討を行った。

・ シリーズ「宗教×SDGs」の第3回は、「子ども食堂、介護者カフェによる寄り添いの実践―地域を支える拠点として」(仮題)をテーマとて、次年度以降開催の企画の協議、検討を行った。

イ. 宗教文化セミナーの企画 (D)

(ア) 第7回宗教文化セミナーの企画

・ 文化財保護法の改正から考える、信仰に根差した文化財の保存と継承」(仮題)次年度以降開催の企画の協議、検討を行った。

 

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3. 広報活動

(1)ホームページによる宗教文化並びに信教の自由に関する情報の発信及び広報の推進

ア. ホームページによる情報発信

・ 信教の自由の尊重と擁護、並びに、宗教文化の振興と普及のため、各種活動に関する情報やセミナーの開催告知、事業活動等の概要についてホームページで公開し、広く一般へ情報を発信することに努めた。

・ 機関紙『日宗連通信』を電子化してホームページで公開することで、宗教文化の社会との関わりや、当連盟の事業活動について情報を広く一般に提供した。

(2) 機関紙『日宗連通信』による宗教文化並びに信教の自由に関する情報の発信

ア. 機関誌の編纂、刊行

・ 『日宗連通信』の発行

令和元(平成31)年度の機関誌『日宗連通信』では、前年度末に開催の第4回宗教法人の公益性に関するセミナー概要の掲載をはじめ、国連の「持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)」に関する情報提供や、平成30年7月に行われた「米国信教の自由に関する大臣会議・2018 Ministerial to Advance Religious Freedom」(於 米国・ワシントン)の出張報告会の概要、自由民主党・予算・税制等に関する政策懇談会に提出した要望(宗教や宗教文化に関する諸問題)等について紹介した。

『日宗連通信』は700部作成し、関係諸団体を中心に配布した。また、ホームページでPDF版を公開することで、広く一般社会にも情報を提供した。

・ 令和元年度宗教法人実務研修会全9会場での配布資料として、『別刷・日宗連通信』を1800部作成し、研修会参加の宗教法人関係者を通して、一般にも情報を発信した。

 

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4. その他、目的を達成するために必要な活動

(1) 関係諸団体及び、官庁等への協力

ア. 各種依頼への協力

・ 公益財団法人庭野平和財団主催・第36回庭野平和賞贈呈式に理事が参列し祝辞。

・ 厚生労働省主催・千鳥ヶ淵戦没者墓苑拝礼式に事務局長が参列。

・ 新日本宗教青年会連盟主催・第54回戦争犠牲者慰霊並びに平和祈願式典に事務局長が参列し献花。

・ 政府主催・全国戦没者追悼式に理事長が参列し献花。

・ 千鳥ヶ淵戦没者墓苑奉仕会主催・秋季慰霊祭に理事長が参列し献花。

・ 神社本庁主催・御大典奉祝全国神社関係者大会が催行され、事務局長が理事長代理として参列。

・ 世界連邦日本宗教委員会主催・「第41回世界連邦平和促進全国宗教者・信仰者神奈川・寒川大会」に協賛。理事長、事務局長が参加し、理事長が祝辞。

・ 世界宗教者平和会議(WCRP)日本委員会の新春の集いに、理事長が出席し祝辞。

・ 全日本仏教会主催新年懇親会に理事が参列し祝辞。