文化庁宗務課・令和3年1月25日事務連絡 「宗教法人が行う社会貢献活動について(情報提供)」の周知と論点整理(ガイドライン)
令和3年2月2日
各 位
公益財団法人 日本宗教連盟
理事長 戸松義晴
文化庁宗務課・令和3年1月25日事務連絡
「宗教法人が行う社会貢献活動について(情報提供)」の周知と論点整理
(ガイドライン)
この度、文化庁宗務課は、「近年、多くの宗教法人が、全国的に自然災害が発生する中で地域の防災・復興に協力をされるなど、災害対策や地域支援などの社会貢献活動を行われていると承知」しているとして、宗教学に関する学識有識者の意見等も踏まえて整理した考え方を各都道府県宗教法人事務担当課宛てに発出した(別紙事務連絡参照)。
当連盟では近年、一部地域で宗教法人の固定資産課税の問題が散見されると聞き及び、宗務課に問い合わせを行っていた。具体的には、宗教法人が、近隣住民をはじめ一般の人々の救済・支援活動を目的として災害備蓄品や炊き出し用器材等を境内建物等で保管した場合、それは宗教活動と認められず、当該保管箇所に対して固定資産税が課税されたという事例を発端としている。
この事務連絡によって、宗教法人が檀信徒や氏子崇敬者、信者信徒のみならず、広く不特定多数の市民を支援、救済するなど、公益事業として社会に貢献する活動を行う場合、それが地域社会のニーズを満たし、必要不可欠との社会通念を踏まえており、かつ、宗教法人側でも、その活動が教義・教憲、実践綱領等に基づくものであると明確に説明、判断できる場合には、「公益事業」ではなく「宗教活動」であると整理することが可能との判断がなされた。この判断は、宗教活動の幅を広げ、公益的な活動に大きな意義を与えると同時に、宗教界に重い責任が課せられたともいえる。
社会貢献を目的とした宗教活動を展開するにあたり、自律規範による実施が社会的責任となる。以下に、論点を整理し、その理解において注意すべき点をガイドラインとしてまとめる。
文化庁宗務課の見解
● 前提として、国等には宗教法人の宗教上の特性や慣習等宗教上の事項の尊重や不干渉が求められている
● 宗教法人が行う救済や支援活動などが、宗教活動であるのか、公益事業であるのか、その判断は宗教法人にゆだねられている
● 各宗教法人がそれぞれの判断に基づき公益事業と整理してきた社会に貢献する活動も、各宗教法人の判断に基づき宗教活動と整理することが可能と考えられる
- 【参考】宗教法人法成立に伴う施行通達(昭和26年7月31日文宗第23号「宗教法人に関する事務処理について(通達)」)において、「境内建物、境内地であって同時に公益事業を行うためにも用いられるものは、境内建物、境内地として処理してさしつかえないこと」とされている
ガイドライン
● 社会に貢献する活動を宗教活動と整理するにあたっては、地域社会の宗教活動へのニーズをはじめとした「社会通念」を踏まえることが最も重要である
- 檀信徒や氏子崇敬者、信者信徒にも「宗教活動」の一環として行われていると理解ができること
- 一般の人々にも、その活動が、神社や寺院、教会の活動として不特定多数の人々のために行われている、また、宗教上の精神に基づく教化活動、救済活動、慈善活動であると明確に分かる活動であること
- 地域文化と融合した祭りや、地域と密着した縁日、慰霊の行事など、地域のニーズを満たし、それが社会通念上必要不可欠であると認められた活動であること
● 社会に貢献する活動がどのような観点から行われるのか、宗教活動と密接不可分である理由が明確に説明できること。また、教義や教憲、実践綱領等に則って行われる「宗教活動」であるとの根拠が明確であることが望ましい
- その社会に貢献する活動が、宗教活動と密接不可分である理由が明確に説明できる必要がある
- 何を根拠としてその活動を行うのか、各宗教の教義・教憲、実践綱領等に基づく一般市民への支援、救済活動であるかなど、根拠が明確であることが望ましい
- 宗教法人規則等と異なり、所轄庁への提出・認証、事務所への備付等は必要ないが、それがゆえに所轄庁ではなく各宗教法人で説明責任を果たすことが必要であることから、根拠や説明を明示できるように備えておくことが望ましい
● 宗教活動として社会に貢献する活動を行う場合は、その活動に関する宗教法人の携わり方や活動内容の透明性を確保し、社会に対する説明責任を果たす必要がある
- 社会に貢献する活動については、金銭の授受がないボランティアによる活動が好ましい
- 資金収支などの公開は求められないが、一般にも説明できるように活動記録を作成することが望ましい
- ホームページなどで活動内容を公開することも考えられる
● あくまでも、自主的な活動、宗教法人自らが携わる活動であること。他のNPO法人や公益法人の社会貢献活動を、自らの宗教活動とすることはできない。活動主体の変更など、宗教活動と整理するための取組が必要になることも考えられる。
- 委託されたもの、丸投げでない活動であること
- 席貸業や、委託事業は含まれない
《考えられる事例》
- 防災・減災の取り組み(帰宅困難者等を対象とした災害備蓄品、防災用品、炊き出しの道具などの備蓄)
- 子ども食堂、介護者カフェの実施(金銭の授受がない場所貸しでない場合)
- スカウト活動の支援(現時点で収益事業としていない、席貸し、場所貸しでない場合)
- 祭礼に必要な自治会等所有の神輿、山車等の保管
注意すべき点
● 自主的に宗教法人が行う社会に貢献する活動、救済・支援活動が対象となるため、宗教団体以外の団体等(NPO法人や公益法人)が行う社会貢献活動を自らの「宗教活動」と整理することは適当でない
● 宗教法人が行う社会に貢献する活動が、宗教活動か公益活動かの判断は、宗教法人法(第84条、第85条)の趣旨に反するため、文化庁宗務課や都道府県宗教法人事務担当課(国や行政機関)では判断できない