鳥取県による宗教法人の財務情報開示について(5)

鳥取県による宗教法人の財務情報開示について(5)―日宗連からの再質問

平成16年3月31日

鳥取県知事 片山善博 殿

東京都港区芝公園4-7-4明照会館内
財団法人 日本宗教連盟
事務局長 宮澤佳廣

 宗教法人の財務情報開示に関する貴県回答への再質問

 貴県情報公開条例(以下、「貴県条例」という。)に基づく宗教法人の財務情報開示について、本年2月12日付文書にてお尋ね致しましたところ、ご回答を賜り有難うございました。
 ついては、貴県のご回答中、下記について改めてお尋ね致したく、誠に恐縮ながら貴県の御見解を4月17日までに文書にてお示し下さいますよう、お願い申し上げます。

1 回答では、情報開示の対象となった宗教法人名を公表することができない理由として、「開示請求者の特定につながるおそれ」を挙げていますが、そもそも宗教法人名を公にすると開示請求者の特定につながると考えられる理由をお示し下さい。

2 回答では、情報開示の対象となった宗教法人名を公表することができない理由として、「当該宗教法人が何らかのトラブルを抱えているのではないかと推測させる可能性があるなど当該宗教法人の不利益となるおそれ」のあることを挙げています。しかし、貴県の当該法人に係る開示決定は、開示後に開示請求者によって当該法人名が公表される可能性を考慮に入れた上でのもので、当該法人名が公表される可能性があるにも拘らず敢えて開示したのは、それでも当該法人の利益を害するおそれがないと貴県が判断したことを意味するものです。となれば、当該法人の利益を害するおそれがあることを理由に当該法人名の公表を貴県が拒否することは、明らかな論理矛盾と考えられますが、その理由について再度ご説明願います。

3 回答では、貴県条例第9条第2項第3号アにいう「当該法人等又は当該個人の権利」のうち、「当該法人等」に当たる宗教法人については、その権利に「信教の自由に基づく権利が含まれる」とした上で、そうした「『権利、競争上の地位その他正当な利益を害する』ものとは、宗教活動の中核をなすようなもので、開示することで宗教法人の尊厳が損なわれるおそれのあるようなものと考えており、例えば、檀信徒数や宝物等に関する記載が該当する」としています。これによれば、宗教法人の権利に含まれるとする「信教の自由に基づく権利」の実質とは、「宗教法人の尊厳」といった極めて抽象的な概念であるかのように受け止められますが、貴県が「信教の自由に基づく権利」について、そのような理解をされていると考えてよろしいかどうか、お尋ねします。

4 回答では、「宗教法人については『当該法人等の権利』には憲法で保障された信教の自由に基づく権利が含まれる」とした上で、宗教法人情報の開示・非開示の判断は「条例の規定に則って行っている」としていますが、貴県条例第9条第2項第3号アの規定と「行政機関の保有する情報の公開に関する法律」第5条第2号イの規定の文言が同一であるにも拘らず、宗教法人の非公知情報の開示について貴県と国で判断を異にするのはいかなる理由によるとお考えか、ご回答願います。
 また、回答では、開示・非開示の判断に当たっては「法人の種類によって判断を異にすることはある」としていますが、貴県保有の210の公益法人と26の学校法人の財務書類、及び社会福祉法や農業協同組合法等により貴県が保有する財務書類について開示請求があった場合、個別審査の以前に「法人の種類」に基づいて非開示の決定が下される情報があるのか否か。仮にあるとすれば、法人の種類別にその情報の内容と貴県が既に開示した宗教法人の財務情報との差異を併せてご回答下さい。

5 回答では、宗教法人情報の開示・非開示の判断は、宗教法人法第25条第5項の「規定を念頭に置きながら、条例の規定に則って行って」いるとしていますが、宗教法人の備付け書類の閲覧・提出を義務付けた宗教法人法第25条の規定では、それら書類の閲覧義務の対象を「信者その他利害関係人」であって「正当な利益があり、かつ、その閲覧の請求が不当な目的によるものでないと認められる者」に限り、何人の閲覧請求にまで応える義務を課してはいません。つまり、同条の規定は、特定の者以外の閲覧請求についてはこれを拒否する権利を宗教法人に保障するものとも解されますが、貴県条例に基づく宗教法人情報の開示は、宗教法人法が保障するかかる閲覧請求を拒否する権利を侵害することにはならないか、お尋ねします。
 また、貴県の「規定を念頭に置きながら、条例の規定に則って」行うとする回答は、宗教法人法の趣旨に従って貴県条例を運用するという意味なのか、それとも「念頭に置く」という用語の用例通り、宗教法人法の趣旨を「心にかけながら」貴県条例を運用するという意味なのか、併せてご回答願います。

6 回答では、貴県条例の目的に関連して、「県民の県政に対する信頼が不可欠であり、そのためには宗務行政も含め県の保有する公文書を条例に従い公開することで透明性を確保することが重要である」としていますが、宗教法人の財務状況を開示することが何故に宗務行政の透明性の確保につながるのか、その理由をお示し下さい。
 また、その場合において貴県は、貴県条例に基づく宗教法人情報の開示に係る事務は宗務行政と認識されているのか否か。さらに、宗教法人法第25条第3項との比較において、宗教法人法の規定では宗務行政の透明性の確保は不十分だという認識に立たれているのか、併せてご回答願います。

以 上

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