改正臓器移植法に対する懸念と今後の姿勢
日本宗教連盟は、平成21年7月13日に成立した改正臓器移植法に対して、宗教者の立場から強い懸念を表明します。
脳死を前提とした臓器移植は、国民の生と死に深くかかわる問題であり、誰かの「死」がなければ成り立たない特殊な医療です。また、国民一人ひとりが「死」とどのように向き合っていくのか、臓器を提供したドナー家族へのケアのあり方など、解決されるべき多くの問題を抱えています。
本連盟は、今般の法改正にあたり、「脳死は人の死ではない」との立場から、「本人の書面による意思表示の確認」、「小児に対する厳格な脳死判定基準の導入」、「被虐待児を対象としない」など、ドナーとレシピエント双方の「いのちの尊厳」が侵害されることがないよう、国会での慎重な審議を訴えました。
しかし、改正臓器移植法が、医療関係者のみならず、法曹界、宗教界などから多くの問題点を指摘されていながら、国会審議において解決策が十分に検討されることなく成立したことは、将来にわたり日本人の死生観に禍根を残すものと言わざるをえません。
日本宗教連盟は、これらの諸問題が今後、法律の運用指針作成において、慎重に検討されていくことを強く望む次第です。日本宗教連盟は、臓器移植法のみならず、国民の生と死にかかわる諸問題に対して、生命尊重の精神をよりいっそう喚起していくことを決意するものであります。
平成21年10月13日
財団法人 日本宗教連盟
理事長 岡 野 聖 法