令和4年度 年頭所感

公益財団法人日本宗教連盟

理事長  宍野史生

 

日本宗教連盟の活動に対して格別のご高配を賜り心より御礼申し上げます。

二月六日、トルコ南東部のシリア国境近くで大規模地震が発生しました。三月七日現在、両国あわせておよそ五万二千人が亡くなられました。犠牲になられたすべての方々に哀悼の意を捧げ、大切な人を亡くされた方々や被災された方々の心に寄り添い一日も早い復興を祈ります。

さて、近代 日本に於ける信仰の自由への道のりは、さまざまな経過がありました。

明治六年、切支丹邪宗門を禁止していた五榜の掲示が取り除かれたことを皮切りに、

明治十七年、信仰の根幹となる葬儀執行における宗教の自由が認められます。

そして明治二十三年、帝国憲法二十八条に安寧秩序を妨げず及び臣民たる義務に背かざる限りにおいて信教の自由を有すと、明記されました。昭和十四年、宗教団体の保護・監督を強化し、国家の統制下に置くことを目的に宗教団体法を施行。昭和二十年、GHQの市民的自由に関する指令により、宗教法人令が施行。昭和二十一年、日本国憲法の人権の観念に基づき、平等権、自由権、社会権が明示されます。昭和二十六年には基本的人権の尊重、思想及び良心の自由、信教の自由、表現の自由、学問の自由を堅持する基本理念に基づき、宗教法人法が施行されました。

近代法制度において、我が国はさまざまな経験と実績を重ね、さらには国家の深い反省に立脚して宗教法人法の施行に至ったのです。

申すまでもなく、宗教法人の認証は、宗教の教義を広め、儀式行事を行い、信者を教化育成することを目的として、礼拝の施設や財産を所有し、目的達成のための業務運営のため、法律上の能力を付与されたものです。蛇足ながら、宗教法人は公益法人ですから(第百三十四国会衆議院宗教法人に関する特別委員会第三号平成七年十一月二日)公益法人税制(法人税法、別表第二公益法人の表)が適用されていますので、宗教法人税制という言葉は存在しません。法人の目的事業としての賽銭、お布施、喜謝金、祈祷料等は非課税ですが、宮司や住職など宗教法人の従事者、職員給与には源泉所得税の課税、さらに、本体の宗教活動以外の収益事業には(例えば、駐車場などそれが三台とか五台であっても)固定資産税・所得税等、一般法人同様に課税され納税しており、宗教法人は「全く税金を払ってない」と言われるのは明らかな間違いです。

そして、認証を受けている全国の宗教法人数は十八万法人ですが、その実態は、年間収入五〇〇万未満が八五%、従事者三名以内が八〇%を占める、誠に小規模で零細な法人がほとんどであります。そういった少ない財務の中で運営している法人が大半ですが、全国の神社、仏閣、祠宇、仏堂、教会、教会所は地域の伝統文化の継承やコミュニティーとして、また震災時における避難所設置や防災活動など様々に地域の皆さまと力を合わせ日々努力しています。皆様のお働きに敬意を表し感謝申し上げます。

我が国は関東大震災や阪神・淡路大震災、東日本大震災など大規模な災害を経験しました。その経験をもとに宗教施設を避難所に指定するなど、災害に備える取り組みが各地で進められています。稲場圭信大阪大学大学院教授の調査では「宗教施設と災害協定締結や災害時協力関係のある自治体は三百二十九自治体、宗教施設の指定避難所は二千六十五施設にも上る」(令和元(二〇一九)年十一月調査)ということです。当連盟では宗教施設の防災協力について広く知っていただくため、令和四年五月に「防災・減災セミナー」を開催しました。当連盟のYouTubeチャンネルで動画を公開しておりますので是非ご活用ください。

そういった中にも宗教法人には社会の厳しい目が向けられています。宗教法人が公益法人として社会で活動し続けるためにも、法人運営における適正な管理運営、説明責任、情報開示を行い、法令を遵守することは必須です。

また、地方の過疎化が要因となり、近年問題となっている不活動宗教法人対策も急務であります。日本宗教連盟ではこれらの問題への取り組みについても強く推進して参りたいと存じます。

 

(教派神道連合会理事長)