臓器移植法改正案の参議院審議に対する意見書

 日本宗教連盟は、臓器移植法改正案の参議院での審議に際し、宗教者の立場から以下のとおり意見を表明いたします。
 私たち宗教者は、この世に生を享けた一人ひとりのいのちは、どの宗教においても、すべて等しく、かけがえのないものと受けとめています。一方、脳死・臓器移植は、生きている他者の重要臓器の摘出を前提としている限り、普遍的な医療行為にはなり難いと思料いたします。こうしたことから、参議院での審議にあたっては、ドナーとレシピエント双方の「いのちの尊厳」が侵害されることがないよう、下記の点を踏まえ、慎重に審議を重ねられますよう、お願い申し上げます。

  1. 脳死と診断された後、身長が伸び、体重も増え、いのちを刻み続けている子どもたちが数多く紹介されている。また、多くの日本人が、今なお「死の三徴候」をもって、「人の死」を受け入れていることから、「臓器移植の場合にのみに脳死を人の死」と規定すべきである。(現行法の尊重)
  2. 臓器移植後、手紙や日記などで本人が移植を望んでいなかったことが判明する場合が想定される。ドナーの「いのちの尊厳」を守るためにも、「本人の書面による意思表示」を規定すべきである。(現行法の尊重)
  3. 脳死段階での小児からの臓器移植については、大人と異なり子どもが蘇生力に富んでいることから、より厳格な脳死判定の基準の導入被虐待児を対象としないなど、脳死判定基準の検証をはじめ子どもを保護するシステムを検討すべきである。
  4. 以上3点を踏まえ、わが国の脳死・臓器移植が直面している諸問題を解決していくために、「第2次脳死臨調」を早急に設置し、集中的な検討を始めるべきである。

 臓器移植法の改正は、国民一人ひとりの死生観、とりわけ次の世代を担う子どもたちへの影響が大きいことから、問題点を残したままでの採決は、将来にわたり日本の文化・社会に大きな禍根を残すものとの危惧の念を禁じえません。良識の府・参議院において、ひとえに秀抜なるご見識をもって慎重にご判断されることを、強く要望いたします。

平成21年7月1日
財団法人  日本宗教連盟
理事長   岡 野 聖 法