公益法人制度改革に関する要望書

平成18年2月15日

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内閣官房行政改革推進事務局
公益法人制度改革推進室 御中

日本キリスト教連合会
常任委員長 松岡俊一郎
東京都新宿区砂土原町1の1
(日本福音ルーテル教会内)

公益法人制度改革に関する要望書

 日本キリスト教連合会(以下[キリスト教連合会」という。)は、日本におけるカトリック教会、聖公会、プロテスタント教会の連合団体であり、日本宗教連盟の構成団体であります。
 キリスト教連合会は、平成17年12月に発表された「公益法人制度改革(新制度の概要)」を精査した結果、このままでは宗教団体に重大な影響を及ぼすことを危惧します。本書は宗教団体である民法法人の実情を詳述し、その改善を要望するものであります。1 宗教団体の民法法人に対する影響

(1)「宗教活動を行っている」宗教団体の社団法人・財団法人
 キリスト教の宗教団体の中には、宗教法人法(昭和26年4月3日法律第126号)が制定されるはるか以前から存在する団体があり、明治35年~36年に民法法人(社団法人・財団法人)として成立し、100年余の歴史があります。これらの宗教団体は、アメリカをはじめ西欧諸国からの献金によって支えられている宗教団体であり、多数の宣教師が所属しています。もし、これらの社団法人が公益社団法人に認定されないとすればアメリカ、西欧諸国の宗教団体、教会、信者から送金されてくる献金に対して課税という問題が発生します。一方、新しい制度のもとで公益社団法人・公益財団法人になれば、憲法20条で保障する信教の自由に照らして新制度の概要にある「監督」・「命令」・「立入検査」はとうていなじまないものであります。それゆえに、このたびの公益法人制度改革の概要は、「宗教活動を行っている」社団法人・財団法人である宗教団体の扱いが検討されていないと思量します。

(2)「宗教活動を主たる目的にしていない」キリスト教系社団法人・財団法人
 宗教活動を主たる目的にしていないが、キリスト教精神に基き公共の福祉のために貢献してきた社団法人・財団法人が多数あります。キリスト教系社団・財団法人は、一部を除くとほとんどの社団法人・財団法人がキリスト教会と信者の献金によって働きを開始し運営されているものです。これらのキリスト教系社団・財団法人の中には、孤児や婦人の厚生事業、アルコールや薬物中毒者の救済、学校教育事業、医療施設、精神文化の醸成に貢献してきた法人があります。 又、社団法人・財団法人の中には宗教法人の礼拝施設を確保したり、聖書を頒布したり、放送を通してキリストの福音を伝えたり、キャンプ場を運営したり、青少年の育成に携わってきた、内容において宗教法人と同じ類の活動をしている社団法人・財団法人があります。これら宗教の多様性を是非ご理解いただきたく思います。
 このような情況を踏まえてみるとき、公益認定法人の認定基準(イロハニホヘ等)の中に「宗教」がないことは、宗教の重要性を理解していないか、宗教を意図的に無視している基準と云わなければなりません。このままでは宗教関係の社団法人・財団法人の活動が萎縮し、中には存続さえ危惧される法人が出てきます。ひいては公益事業を民間の活力に委託するという公益法人制度改革の本来の趣旨を著しく損なうことになります。

2 キリスト教連合会の要望

  1. 新しい公益法人制度を制定するにあたり、「宗教活動を行っている」社団法人・財団法人(宗教団体)が望む場合は、容易に宗教法人に移行できる移行措置を要望します。
  2. 宗教活動を行うことを主たる目的にしていないが、「宗教」を設立根拠にしている社団法人・財団法人が望む場合は、公益認定法人になれるように認定基準に「宗教」を入れることを要望します。
  3. 公益法人制度改革(新制度の概要)では、判読しにくい重要事項の一つに残余財産の帰属の問題があります。社団法人・財団法人が宗教法人の礼拝施設を確保し提供していること等の実情に鑑み公益社団法人・公益財団法人の残余財産の帰属先に「宗教法人」を明記することを要望します。

以上のとおり、宗教団体としての実情を訴え慎んで要望を申し上げます。