「公益法人制度改革」について(要請)

平成18年2月20日

内閣官房行政改革推進事務局
公益法人制度改革推進室 御中

財団法人 全日本仏教会
事務総長 齋藤明聖
東京都港区芝公園4-7-4明照会館内

「公益法人制度改革」について(要請)

 紀元前5世紀、北インドにおいてお釈迦様によって創唱された仏教は、その後世界各地へ伝えられ、現在アジア諸国を中心に約5億人の信徒を有しています。わが国には紀元6世紀に伝来して以来、聖徳太子をはじめとする数多の先覚者による不惜身命の努力を通して、国民精神生活に深く浸透し日本文化の基層を構築してきました。それは建築、美術、文学、思想などわが国の伝統文化を顧みるとき、有形無形を問わず仏教の影響を受けなかったものはほとんどないという歴史的事実が如実に物語っています。現在わが国には約8万カ寺の仏教寺院があり、日々約20万人の僧侶が8千万人を超えるという信徒の教化に専念しています。
 「財団法人全日本仏教会」は、有力な58宗派を中心に、36都道府県仏教会、9仏教団体を構成単位に加えた伝統仏教界唯一の連合体であり、組織率は全国寺院の95パーセントに達し、仏陀の和の精神を基調として時代に即応する活発な全一仏教運動の展開を図り、仏教文化の宣揚と世界平和の進展に寄与することを目的としています。
 さて、このたびの『公益法人制度改革(新制度の概要)』をみますと、公益的事業の例示の中に、現行民法第34条にある「祭祀」「宗教」が抜けています。これは、(1)宗教が人心の安定をはかり、教育、文化、社会福祉、その他公益の増進に寄与してきたことを軽視し、活動を縮小させ、宗教のもたらす精神文化の高揚を後退せしめ、あるいは宗教そのものの存在すら危うくするものではないか、(2)現行民法第34条にある「祭祀」「宗教」を設立根拠としている財団法人、社団法人が、自らの設立根拠を失い「公益財団法人・公益社団法人」として認定されないのではないか、(3)「宗教法人」が公益法人であることの法的根拠として現行民法第34条が引用されてきたが、このままでは「宗教法人」が公益法人であることの法的根拠を失いかねない(『宗教法人に関する特別委員会議事録第3号』平成7年11月2日・『宗教法人に関する特別委員会議事録第5号』平成7年11月7日参照)、との危惧を抱くに至りました。
 ついては、公益的事業の例示の中に、宗教活動を主たる目的としていない財団法人、社団法人の活動として「信教の自由の擁護や、宗教文化の振興、宗教法人の擁護後援の活動、宗教に関する調査研究等」と明記されること、さらに残余財産の帰属先に従来通り「宗教法人」を加えることを提起し、現存の「宗教」「祭祀」を設立根拠とする財団法人、社団法人、さらには全国18万の「宗教法人」の活動に支障をきたさぬよう慎重な法的整備を要請するものであります。