臓器移植法改正問題に対する意見書

 日本宗教連盟は、教派神道連合会、全日本仏教会、日本キリスト教連合会、神社本庁、新日本宗教団体連合会の五団体で構成され、これまで脳死・臓器移植問題をはじめとする生命倫理の問題に関して、諸宗教共通の課題として取り組んでまいりました。このたびの「臓器の移植に関する法律」(臓器移植法)改正をめぐる諸問題に対し、宗教者の立場から以下のとおり意見を表明いたします。
 臓器移植法が施行し約12年となりますが、心臓が動き、温かい血液が循環する人間の身体を「人の死」と見なすことを前提としている移植医療に対して、多くの国民が今も疑問と不安を抱いております。この問題は個々人の死生観と深く関わることから、「本人の書面による意思表示」は、脳死・臓器移植に欠くことのできない絶対条件であると思料いたします。また、脳死段階での小児からの臓器移植については、より厳格な脳死判定基準の導入、被虐待児を対象としないなど大人とは異なる検証システムの検討が急務であると考えます。
 こうした課題点を踏まえれば、わが国の脳死・臓器移植が直面している諸問題を解決していくためには、医学、法律、哲学、宗教、倫理などの専門家による総合的な検討とともに、広範な社会的議論に基づく意見集約が急務であると考えます。本連盟は、「第2次臨時脳死及び臓器移植調査会」が早急に設置され、脳死小児からの臓器移植等の問題について、慎重に審議されることを求めるものです。
 脳死・臓器移植は、他者の重要臓器の摘出を前提とする限り普遍的な医療とはなり難く、あくまでも緊急避難的な治療法と言わざるを得ません。臓器移植法の改正は、国民一人ひとりの死生観に及ぼす影響が大きいことから、問題点を残したままでの採決は、将来にわたる日本人の死生観の形成に禍根を残すものとの危惧の念を禁じえません。偏に慎重なる審議をお願いするものであります。

平成21年4月17日
東京都港区芝公園四丁目7-4明照会館内
財団法人  日本宗教連盟
理事長   矢田部 正巳