公益法人制度改革に関する要望書

平成十八年二月二十二日

内閣官房行政改革推進事務局
公益法人制度改革推進室 御中

神社本庁

公益法人制度改革に関する要望書

 我国の歴史的・文化的経緯から見て、社会一般にいふ宗教的事象は、社会生活と密接な関係を有してゐるといへる。今日、広く社会で行はれ、我国の文化的風土と密接な関係にある年中行事、人生儀礼、祭礼行事等の多くは、いづれもが宗教・祭祀・信仰上の理念や伝統に淵源してゐる。それ故、国民の多くが平和で豊かな生活を営む為に、違和感なくこれを受け入れ、宗教儀礼としての性格を有する行事に積極的に参加してきた。また神社を始めとする多くの宗教施設は、コミュニティーセンターとして機能するのみならず、地域の自然環境の保全にも大きな役割を果たしてきたといへる。
 更に宗教は、社会全般に対して倫理・道徳的な機能を担ひ、社会規範を構成する上で重要な役割を果たしてゐる。広く現代社会に求められる正直、清浄、勤勉、調和といふ重要な社会原則にしても、宗教はその心情を強く促進させてきた。
 また神社等での祈りは、特定の人々のみの安寧や幸福に留まらず、広く地域社会や国全体の秩序と調和、豊かな生活と発展を願ふものでもある。このやうな宗教及び宗教的行事等を通して育まれてきた共同体の意識や紐帯は、歴史的に見ても大きな役割を果たしてをり、現代においても地域社会の安寧や秩序の維持に資するものである。
 このやうに宗教的事象は、祭祀、祭礼、習俗として社会生活の中で有機的に結びつき、渾然一体となって我国の伝統的な風土に根ざした国民生活上の精神的基盤となってゐる。
 今日まで宗教が果たしてきた役割は、文化的、精神的な背景から社会においても高く評価され、現行民法第三十四条及び宗教法人法における「公益」の理念等に常に反映されてきた。しかし昨年末に出された『公益法人制度改革(新制度の概要)』には、この宗教が持つ「公益性」に対する理解が後退してゐるやうに思はれる。
 以上のことから本改革の推進に当り、宗教の持つ「公益性」を明確にする上でも、次の二点を要望する。

一、「祭祀、宗教」に関連し設置された現社団法人・財団法人が、新制度下においても「公益性」が認められ継続して活動できるやう、認定基準に「祭祀、宗教」の項目を加へて「公益」として明示すること。

一、現行制度、移行期間は勿論のこと、新制度下において、公益認定法人の清算時の残余財産が、設置理念に係る「宗教法人」に帰属できるやうにすること

以上