意見1(総合的な学習の時間に関すること)

平成29(2017)年3月15日

文部科学省

初等中等教育局教育課程課 御中

公益財団法人日本宗教連盟

 

【中学校学習指導要領案について】

 

意見1(総合的な学習の時間に関すること)

【要旨】

「伝統や文化に立脚した広い視野を持ち、志高く未来を創り出していくために必要な資質・能力」を育む教育を目指すのであれば、伝統・文化の根底にある我が国の宗教に関しての公正公平な「宗教知識教育」と「宗教文化教育」の推進は避けて通ることはできません。

「宗教に関する一般的な教養」については、社会科のみならず、国語・英語・音楽・美術・道徳などの関連教科において横断的に学ぶことが効果的であり、「総合的な学習の時間」などで「環境教育」や「食育」など、宗教との関係性のなかで考察するアクティブ・ラーニングの教材の一つとして扱うこともできます。宗教に関する各教科の知識を相互に関連させて学習できるよう進めていくべきであると考えます。

【意見】

中学校学習指導要領案における宗教に関する教育の取扱いについて、総合的な学習の時間に関連して意見を申し上げます。

本連盟は、昨年10月31日、「次期学習指導要領等に向けたこれまでの審議のまとめ」について、中央教育審議会・教育課程企画特別部会における意見表明を行い、「伝統や文化に立脚した広い視野を持ち、志高く未来を創り出していくために必要な資質・能力」を育む教育を目指すのであれば、伝統・文化の根底にある我が国の宗教に関しての公正公平な「宗教知識教育」と「宗教文化教育」の推進は避けて通ることはできないと考え、さらなるご審議をお願い申し上げました。

中央教育審議会の審議でも重要な1点とされた、「社会に開かれた教育課程」については、このほどの中学校学習指導要領案、7頁「第3 教育課程の実施と学習評価、1 主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善」の(5)に「生徒が生命の有限性や自然の大切さ,主体的に挑戦してみることや多様な他者と協働することの重要性などを実感しながら理解することができるよう,各教科等の特質に応じた体験活動を重視し,家庭や地域社会と連携しつつ体系的・継続的に実施できるよう工夫すること。」として新設されました。これによって、各学校等のカリキュラム・マネジメントのなかで、より積極的に、身近な地域社会の伝統や文化を支える寺院や神社、教会などの、行事やお祭りといった文化に触れる「宗教文化教育」が行われたり、宗教文化をとおして地域に親しみを持つ機会を設けることができるように改善されたことは、評価すべきことであります。

また、宗教に関する一般的な知識や教養については、中学校学習指導要領の社会科、なかでも「公民的分野」の46頁に「『現代社会における文化の意義と影響』については,科学,芸術,宗教などを取り上げ,社会生活との関わりなどについて学習できるように工夫すること」、48頁に「国際社会における文化や宗教の多様性について取り上げること」と、前回改正時から明記されています。

しかし、これらの科目で学習するだけでなく、国語・英語・音楽・美術・道徳などの関連教科において横断的に学ぶことが効果的であり、宗教知識や教養に関する学習が明確に位置づけられる必要があります。また、持続可能な開発のための教育(ESD)の一環として、「環境教育」や「食育」などは、宗教との関係性のなかで考察することで、アクティブ・ラーニングの教材の一つとして扱うこともできます。

以上のような横断的な学習指導ができるように、教職課程においても国内外の宗教知識について幅広く学ぶことができるカリキュラムを導入して、教員自身が「宗教に関する一般的な教養」を養うとともに、特定教科だけではなく、「総合的な学習の時間」などで、宗教に関する各教科の知識を相互に関連させて学習できるよう進めていくべきであると考えます。

教育基本法第15条第1項に、宗教教育については「宗教に関する寛容の態度、宗教に関する一般的な教養及び宗教の社会生活における地位は、教育上尊重されなければならない。」と定めております。また、同条第2項には、「国及び地方公共団体が設置する学校は、特定の宗教のための宗教教育その他宗教的活動をしてはならない。」と明記しておりますが、同条2項が禁止しているのは、公立学校における「特定の宗教のための宗教教育」であって、次期学習指導要領等において、宗教に関する一般的な教養を育むためには、必要かつ適切な「宗教知識教育」を実施すべく、配慮されなければならないと考えます。

以上