平成30年度事業報告(概要)

公益財団法人日本宗教連盟

平成30年度事業報告書(概要)

(平成30年4月1日~平成31年3月31日)

 

Ⅰ 事業

第1  概要

事業の状況

当連盟は、宗教界の連合組織として、神道・仏教・キリスト教・新宗教等の垣根を越えて、信教の自由の尊重と擁護のもと、宗教文化を広く社会に振興・普及することで、道義に基づく豊かな社会の形成に寄与するとともに、もって世界平和の確立に貢献する活動を展開している。

当事業年度も上記事業趣旨に基づき、教派神道連合会、全日本仏教会、日本キリスト教連合会、神社本庁、新日本宗教団体連合会、及び、その他の団体との緊密な提携を図り、公益目的事業である「宗教文化振興事業」を柱に、調査研究活動、講座・セミナー開催活動、広報普及活動などを展開した。

 

[ 信教の自由の尊重と擁護並びに宗教文化の振興・普及に関する事業 ]

 

第2  各活動の実績

1. 調査研究

(1) 信教の自由の尊重と擁護並びに宗教文化の振興に関する調査研究の実施

ア. 宗教文化を振興するための宗教法人の公益性と信教の自由に関する調査研究の実施(A)

(ア) 宗教法人実務研修会における講義のための調査研究

文化庁・開催都道府県主催の同実務研修会における講義資料作成のため、宗教法人の公益性に関する研究協議を行った。

(イ) 「文化財保護法」改正に係る、「文化財保護法に基づく文化財保存活用大綱・文化財保存活用地域計画・保存活用計画の策定等に関する指針(案)」について、宗教文化振興の観点から調査研究、並びに、同企画調査会に委員派遣協力

政府は、近年の過疎化・少子高齢化が進むなか、社会状況の変化を背景に各地域の貴重な文化財の滅失・散逸等の防止が緊急の課題であるとして、未指定を含めた有形・無形の文化財をまちづくりに生かしつつ、保存、活用を進める改正を盛り込んだ「文化財保護法及び地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律」(平成30年法律第42号)を、平成30年6月に可決成立。改正法は平成31年4月1日から施行された。

文化財の多数は寺社仏閣・教会などに存在し、宗教法人や宗教団体が所有しているものが多いことから、当連盟では、平成30年1月に行われた「文化芸術推進基本計画(第1期)(案)」のパブリックコメントの募集を契機として、宗教文化の振興と普及、並びに、信仰に関連した文化財の保護の観点から情報収集を行い、文化庁文化財部伝統文化課(当時)の担当者と、幹事並びに5団体担当者による意見交換を行ったが(平成30年3月)、当年度も引き続き、文化財や文化財の所有者にどのような影響があるか、研究協議を行った。

今般の文化財保護法の改正により、文化庁文化資源活用課(旧・文化財部伝統文化課)は、「文化審議会文化財分科会企画調査会」を設置。同課が、「文化財保護法に基づく文化財保存活用大綱・文化財保存活用地域計画・保存活用計画の策定等に関する指針(案)」を取りまとめるにあたり、当連盟の幹事(前事務局長)に企画調査会委員としての協力要請があり、幹事が委員として各会議(全3回)に出席した。

・ 第1回文化審議会・文化財分科会企画調査会

・ 文化審議会文化財分科会企画調査会・大綱・地域計画の策定に係る指針に関する作業部会合同会議

・ 文化審議会文化財分科会企画調査会(第3回)大綱・地域計画の策定等に係る指針に関する作業部会(第5回)合同会議

文化財保存活用大綱等の作成にあたっては、各地域の文化財所有者の意見や意向を尊重し、過度な観光目的の利用によって、文化財の価値の損失や損壊が起こらないように、「保存、継承」に重きを置いた体制の整備が行われる必要があることを主張した。

また、文化財保護のためには、多様な文化に対して寛容であり、様々な文化を尊重していく社会の構築も必要である。文化資源活用課による「文化財保護法に基づく文化財保存活用大綱・文化財保存活用地域計画・保存活用計画の策定に関する指針(案)」に関するパブリックコメントの募集に対し、当連盟で研究協議した内容をまとめ、意見として提出した。

(ウ)米国国務省・信教の自由に関する大臣会議「2018 Ministerial to Advance Religious Freedom」への対応

当連盟は、日本における神道・仏教・キリスト教・新宗教等の垣根を越えて事業活動を行う公的な団体であることから、過去には、駐日米国大使館を窓口として、米国国務省民主主義・人権・労働局の担当官が事務局へ来訪し、日本における信仰の自由についての見解に関する調査が行われている。直近では平成29年11月に調査が実施され、事務局長が対応した。

今般、7月に米国務長官の主催で初めて行われた「信教の自由に関する大臣会議:2018 Ministerial to Advance Religious Freedom」について、駐日米国大使館担当者から当連盟理事長へ、日本の市民社会の代表としての招請の相談があり、米国国務省より正式な招請状が届いた。

・ 会議名 2018 Ministerial to Advance Religious Freedom

関係会議の日程 2018年7月24日(火)~25日(水)午前9時~午後5時(24日・ワークショップ、25日・宗教指導者を含む市民社会との会合)

会 場 Harry S. Truman Building, United States Department of State(Washington, D.C. 米国国務省内)

主 催 The Secretary of State of The United States of America

招待者 各国の大臣や政府代表者、および世界中から数百名の市民社会代表者を招待(旅費交通費等は参加者が全額負担。会議には同時通訳がないため英語で討論できることが参加条件。)

本依頼については、第2回理事会で理事長より経緯を説明。同会議に係る派遣費用は予算を確認のうえ執行する旨、理事の了解を得たのち、当連盟を代表して幹事1名を同会議へ派遣することとした。また、随行者1名(全日本仏教会・国際部次長)と出張、滞在に係る諸手配については、全日本仏教会の全面的な協力を仰いだ。

当連盟では、幹事の会議出席のための準備として、5団体関係者に信教の自由に関する見解の聴き取り調査を行い、諸宗教宗派による歴史上の認識についても研究協議、意見交換を行った。その意見交換をもとに、発表用の参考レポートを作成。また、国際会議への出席に臨み、幹事は文化庁・宗務課長との意見交換を行い、米国現地においては在アメリカ合衆国日本大使館政務参事官と面談のうえ、政府発表と同調するための情報交換を行った。

なお、同会議へ出席した幹事は、当日の状況を説明するために「米国信教の自由に関する大臣会議出張報告」を下記の日程で行い、関係者等の参加があった。

日 時  平成31年3月28日(木)午後5時~5時25分

<第4回宗教の公益性に関するセミナーと併催>

会 場  明照会館4階 第一会議室(東京都港区芝公園)

出張報告者(米国へ派遣) 戸松義晴幹事

対象者 宗教関係者、並びに、一般

参加者 31名

 

イ. 宗教文化を振興するための宗教法人実務研修会等の推進 (B)

(ア)文化庁並びに都道府県主催「平成30年度宗教法人実務研修会」への講師派遣と、評価企画会議等委員派遣の協力

宗教法人の適正な管理運営に資することを目的として宗務行政への各種協力を行い、これらの活動をとおして信教の自由の尊重と擁護、並びに、宗教文化の振興と普及に努めた。

・ 「平成30年度宗教法人実務研修会」各会場に講師として事務局長・幹事が出向し、「宗教法人の公益性」について講義を行った。(全9会場)

1)北海道・東北地区(9月5日、宮城県)

2)第1回関東甲信越静地区(9月10日、埼玉県)

3)第2回関東甲信越静地区(11月1日、新潟県)

4)第1回近畿・中部地区(10月9日、大阪府)

5)第2回近畿・中部地区(10月15日、石川県)

6)第1回中国・四国地区(10月17日、島根県)

7)第2回中国・四国地区(10月24日、愛媛県)

8)第1回九州地区(10月22日、沖縄県)

9)第2回九州地区(11月5日、長崎県)

・ 「平成30年度宗教法人実務研修会評価企画会議」へ事務局長と幹事を委員として派遣した。

(イ)文化庁主催、平成30年度開催「宗教法人制度の運用等に関する調査研究の協力者会議」への協力者委員派遣の協力

・ 平成30年度に開催の「宗教法人制度の運用等に関する調査研究の協力者会議」の協力者として事務局長が出席した。

(ウ)文化庁主催「平成30年度不活動宗教法人対策推進会議」への委員派遣の協力

・ 「平成30年度不活動宗教法人対策推進会議」の委員として事務局長が出席した。

(エ)文化庁主催各種研修会への講師推薦協力

・ 文化庁主催「平成30年度都道府県宗教法人事務担当者研修会(認証事務・不活動宗教法人対策)」の講師推薦の協力を行った。

 

ウ. 宗教文化を振興するための協賛団体(教派神道連合会、全日本仏教会、日本キリスト教連合会、神社本庁、新日本宗教団体連合会)、並びに、関係諸団体との連絡・協議・調査研究等の実施 (C)

(ア) 協賛団体との連携協力による調査研究

・ 協賛団体(5団体)との連携によって、宗教・宗派の垣根を越えて信教の自由の尊重と擁護、並びに、宗教文化の振興と普及を行っている。本年度は次の内容について研究並びに協議を行った。

本年度は主に、宗教や宗教文化と密接な関わりを持つ諸問題として、宗教や信仰と文化芸術・文化財に関することの意見交換や情報収集を行った。

また、省庁再々編に関する一部報道を受け、宗務行政・文化行政が、観光や産業の振興等に従属することのないよう、事務局長、並びに、幹事が、自由民主党・行政改革推進本部長、並びに、同副本部長と面談し、情報交換を行った。

その他、公教育と「宗教知識教育」、「宗教文化教育」については、引き続き様々な議論を重ねつつ、シンポジウムの実施等を視野に入れた調査研究を行うこととした。

以上の宗教法人をめぐる諸問題に関して、要望事項等をまとめたうえで、事務局長、幹事が自由民主党主催・政策懇談会に出席し、意見交換を行った。

なお、文化庁・宗務課を交えて、宗教を取りまく諸問題に関する意見交換や情報収集を目的とした連絡会を行った。

(イ) 関係諸団体及び、官庁との連携協力による調査研究

・ 文化庁宗務課より、当連盟関係団体、並びに、関係者に対する「消費税の軽減税率制度に係る説明会」開催の要請を受け、財務省主税局税制第二課課長補佐を講師に迎えて説明会を開催。幹事ほか5団体の担当者19名が出席した。また、「消費税の引上げに伴う価格設定について(ガイドライン)」、及び、「改元に伴う情報システム改修等への対応について」、当連盟関係5団体を通して広報・周知等の協力を行った。

・ 一部の宗教法人が厚生年金に未加入である問題については、これまで全日本仏教会が調査研究を行ってきたが、平成30年2月に当連盟で同案件を引き継ぎ、5団体で情報共有と協議検討を行い、また、厚生労働省年金局担当者を交えて意見交換を行った。なお、厚生労働省年金局は、日本年金機構を通して未加入法人対象のアンケート調査を行い、厚生年金制度に加入していない一部の宗教法人の実態と、その根底にある問題を明確にする方針であるということから、当連盟も、より効果的なアンケートが行われるように、「調査票」の設問作成に際しては協議検討の協力を行った。

・ 公益財団法人全国教誨師連盟主催「第37回全国教誨師大会(広島県)」に理事長が参列し、宗教教誨事業功労者12名に感謝状と記念品を贈呈した。また、表彰式典への参列や、同連盟関係者、参加した教誨師との交流、及び、同連盟から提供される資料をもとに、宗教教誨の現状や犯罪の傾向等の社会問題についても情報を得ている。

・ 法務省主唱、第69回「社会を明るくする運動」について、協力団体として広報推進の協力を行った。

 

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2. 講座・セミナー

(1) 宗教文化並びに信教の自由に関するシンポジウム及び講演等の開催

ア. 宗教法人の公益性に関するセミナーの実施 (A)

(ア)第4回宗教法人の公益性に関するセミナーの開催

・ 社会のあらゆる人々の平和を希求する思いや祈りとは裏腹に、世界の各地では今なお様々な要因による紛争が絶えないばかりか、核兵器の問題やエネルギー問題、環境問題、食糧問題、貧困問題などが山積している。

国連が2030年までの達成を呼びかけている「持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)」は、17のゴールのもと、169のターゲット、232の指標から構成されているが、それらは、多様性と包摂性のある社会の実現、地球上の誰一人として取り残さない(leave no one behind)社会を目指し、各国政府や市民社会、民間セクターを含む様々な主体が連携して取り組むことが求められている。

宗教界では、これまでも様々な取り組みを行ってきた。環境保全の一例として、「鎮守の杜」を守り育てることで豊かな大地をつくり、その恵みは川を通じて海を育てるという取り組み。あるいは、東日本大震災を契機として、一人ひとりが節電に心がけ環境に優しいエネルギー資源の利用を推進する取り組みなど。近年では、お寺の法要のお供物を必要な方々におすそ分けする「おてらおやつクラブ」の活動や、性的少数者(いわゆるLGBT)の方々に対する配慮など、貧困やジェンダーに関する問題への取り組みも始まっている。これらはSDGsの目指す方向性に添うものともいえよう。

本セミナーでは、外務省担当職員を招請し、SDGsの入門講座として基礎・概要を学んだ。また、国際社会でどのような活動が求められているのか、宗教法人や宗教者には何ができるのか、SDGsを「自分の事」として捉えて行動する一歩を踏み出すための機会となることを目的とした。参加者からは、日本政府のSDGsの取り組みの概要がわかった、SDGsについての理解が深まった、などの感想が寄せられた。

また、セミナーに先立ち、同会場において戸松義晴幹事による「米国信教の自由に関する大臣会議出張報告」を併催した。

日 時  平成31年3月28日(木)午後5時35分~7時

併 催:「米国信教の自由に関する大臣会議出張報告」戸松義晴幹事 午後5時~5時25分

会 場  明照会館4階 第一会議室(東京都港区芝公園)

テーマ 「持続可能な開発目標『SDGs』入門講座―社会と共に歩む宗教者であるために―」

講 義 「持続可能な開発目標『SDGs』について」

講 師:甲木浩太郎 外務省国際協力局地球規模課題総括課長

講 師への質問(対談)

講 師:甲木浩太郎 氏

聞き手:戸松義晴 幹事

対象者 宗教関係者、並びに、一般

参加者 35名

 

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3. 広報活動

(1) ホームページによる宗教文化並びに信教の自由に関する情報の発信及び広報の推進

ア. ホームページによる情報発信

・ 信教の自由の尊重と擁護、並びに、宗教文化の振興と普及のため、各種活動に関する情報やセミナーの開催告知、事業活動等の概要についてホームページで公開し、広く一般へ情報を発信することに努めた。

・ 機関紙『日宗連通信』を電子化してホームページで公開することで、宗教文化の社会との関わりや、当連盟の事業活動について情報を広く一般に提供した。

(2) 機関紙『日宗連通信』による宗教文化並びに信教の自由に関する情報の発信

ア. 機関誌の編纂、刊行

・ 『日宗連通信』の発行

平成30年度の機関誌『日宗連通信』では、前年度末に開催の宗教文化セミナー概要の掲載をはじめ、文化財保護法改正に係る情報提供や、「『人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン』の改訂のポイント」に関する提出意見書、高等学校学習指導要領案に関する意見書、自由民主党・予算・税制等に関する政策懇談会に提出した要望(宗教や宗教文化に関する諸問題)等について紹介した。

『日宗連通信』は700部作成し、関係諸団体を中心に配布した。また、ホームページでPDF版を公開することで、広く一般社会にも情報を提供した。

・平成30年度宗教法人実務研修会全9会場での配布資料として、『別刷・日宗連通信』を1800部作成し、研修会参加の宗教法人関係者を通して、一般にも情報を発信した。

 

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4. その他、目的を達成するために必要な活動

(1) 関係諸団体及び、官庁等への協力

ア. 各種依頼への協力

・ 公益財団法人庭野平和財団主催・第35回庭野平和賞贈呈式に理事長が参列し祝辞。

・ 厚生労働省主催・千鳥ヶ淵戦没者墓苑拝礼式に事務局長が参列。

・ 新日本宗教青年会連盟主催・第53回戦争犠牲者慰霊並びに平和祈願式典に事務局長が参列し献花。

・ 政府主催・全国戦没者追悼式に理事長が参列し献花。

・ 千鳥ヶ淵戦没者墓苑奉仕会主催・秋季慰霊祭に事務局長が参列し献花。

・ 全日本仏教会主催・第29回WFB世界仏教徒会議・第20回WFBY世界仏教徒青年会議・第11回WBU世界仏教徒大学会議日本大会・記念法要に、理事長並びに理事ほか当連盟関係者が参列。理事長が祈念法要で来賓挨拶。

・ 世界連邦日本宗教委員会主催・「第40回世界連邦平和促進全国宗教者・信仰者ハワイ大会」に協賛し、理事長が祝辞を寄稿。また、理事長は大会主催者を兼務するため同大会に参加。