平成28年度事業報告書(概要)

公益財団法人日本宗教連盟

平成28年度事業報告(概要)

(平成28年4月1日~平成29年3月31日)

 

Ⅰ 事業

第1  概要

事業の状況

当連盟は、宗教界の連合組織として、神道・仏教・キリスト教・新宗教等の垣根を越えて、信教の自由の尊重と擁護のもと、宗教文化を広く社会に振興・普及することで、道義に基づく豊かな社会の形成に寄与するとともに、もって世界平和の確立に貢献する活動を展開している。

当事業年度も上記事業趣旨に基づき、教派神道連合会、全日本仏教会、日本キリスト教連合会、神社本庁、新日本宗教団体連合会、地方宗教連盟及びその他の団体との緊密な提携を図り、公益目的事業である「宗教文化振興事業」を柱に、調査研究活動、講座・セミナー開催活動、広報普及活動などを展開した。また、財団創立70周年記念事業も併せて実施した。

 

[ 信教の自由の尊重と擁護並びに宗教文化の振興・普及に関する事業 ]

 

第2  各活動の実績

1. 調査研究

(1) 信教の自由の尊重と擁護並びに宗教文化の振興に関する調査研究の実施

ア. 宗教文化を振興するための宗教法人の公益性と信教の自由に関する調査研究の実施及び、財団創立70周年記念事業の実施 (A)

(ア) 宗教法人実務研修会における講義のための調査研究

文化庁・開催都道府県主催の同実務研修会における講義資料作成のため、宗教法人の公益性に関する研究協議を行った。

(イ) 宗教文化を担う宗教法人が平成28年熊本地震で被災した施設を復興する際の一助となるよう、「指定寄付金」制度の措置をもとめた「要望書」を文部科学省と文化庁に提出

平成28年4月に起きた「平成28年熊本地震」による熊本県や大分県を中心とした被害は甚大であり、地域に根差した宗教文化を支えている宗教法人施設も例外なく大きな被害を受けた。そのため、5月27日、明照会館内会議室において、文化庁文化部宗務課長、宗教法人室長補佐、法規係長と事務局長が面談し、「平成28年熊本地震」の被災状況に関する情報交換を行った。

被災状況の詳細が明らかになってくるなか、6月6日開催の理事会において対応を協議。宗教文化振興の観点から、宗教法人施設の復興のための寄附金が集めやすくなるように、「平成28年熊本地震」の災害に係る指定寄附金制度の措置を求めた「要望書」をまとめ、6月7日付け、文部科学大臣、並びに、文化庁長官宛に提出した。また、教派神道連合会、全日本仏教会、日本キリスト教連合会、神社本庁、新日本宗教団体連合会の5団体に協力を依頼して、宗教法人の被害状況を調査し、6月21日付けで暫定的に取りまとめた。

なお、8月26日付けで「平成28年熊本地震」災害に係る指定寄附金制度の財務省告示(第二百四十八号)が公布された。

当連盟では、文化庁文化部宗務課が作成した、「平成28年熊本地震により被災した宗教法人の建物等の復旧のための指定寄附金制度に係る申請の手引について」資料の提供を受けて、5団体の協力を仰ぎ被災地の宗教法人へ制度の周知を行った。

(ウ)学習指導要領等の全面改正に係る研究と意見の提出

学習指導要領等の改正に向けた中央教育審議会の審議の内容が、「次期学習指導要領等に向けたこれまでの審議のまとめ」として、10月に文部科学省ホームページで公開された。

当連盟では、公開された「審議のまとめ」について、宗教文化振興の観点から内容の協議研究を行った。グローバル化が進む社会においては、世界の民族や宗教、歴史的・文化的背景を持った多様な価値観をもつ人々を理解することが必須の条件となる。そのためには、公教育における公平公正な「宗教知識教育」と「宗教文化教育」の推進は避けて通ることができないという視点から協議を重ね、宗教知識や宗教文化に関する教育の在り方について意見をまとめた。

・ 「次期学習指導要領等に向けたこれまでの審議のまとめ」に係る中央教育審議会・教育課程企画特別部会ヒアリングでの意見発表と、意見書の提出

中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会教育課程企画特別部会から、当連盟に対してヒアリングの依頼があり、教育課程企画特別部会(第23回)において理事長が意見発表を行った。また、「『次期学習指導要領等に向けたこれまでの審議のまとめ』に対する意見」を同特別部会主査に提出した。

・ 「第3期教育振興基本計画の策定に向けた基本的な考え方」に係るパブリックコメント(意見公募手続)の実施に対して意見を提出

平成30年度から開始する第3期教育振興基本計画の策定に向けて、中央教育審議会教育振興基本計画部会が中心となって審議が行われ、1月に「第3期教育振興基本計画の策定に向けた基本的な考え方」が公開された。この「基本的な考え方」について、文部科学省学習政策局政策課から意見公募手続が取られた。

これに対し、当連盟では10月に提出した意見書をもとに内容を研究協議し、意見をまとめて提出した。

・ 「学校教育法施行規則の一部を改正する省令案並びに幼稚園教育要領案、小学校学習指導要領案及び中学校学習指導要領案に対する意見公募手続(パブリック・コメント)の実施について」意見を提出

平成28年12月21日の中央教育審議会の答申「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について」を受けて策定された学習指導要領等の改正案が、2月に公開と同時に、文部科学省初等中等教育局教育課程課から意見公募手続が取られた。

これに対し、当連盟では特に中学校学習指導要領案について、10月に提出した意見書をもとに内容を研究協議し、宗教文化振興の観点から意見をまとめて提出した。

(エ)財団創立70周年記念事業の実施

昭和21(1946)年に財団法人として創立した当連盟は、平成28年6月2日に70周年を迎えた。これを記念して「創立70周年記念事業」を平成28年度の公益目的事業の一環として実施。宗教文化振興の観点から宗教界をめぐる社会問題に焦点をあて、公益法人としてこの先の10年を見据えて、今後どのような課題に取り組んでいくのか、その方向性を考えることを目的とした。

記念事業の実施においては、特定資産積立当初の計画を基として平成27年度に具体的事業内容の最終調整を行い、調査研究、シンポジウム、広報の一連の流れによって実施することを決定。平成28年4月に「創立70周年記念式典・祝賀懇談会」を開催。1月発行の『日宗連通信』では、創立70周年記念特集として70年の足跡や事業概要等をまとめ掲載した。また、平成29年2月には「創立70周年記念シンポジウム」を開催した。

記念事業の概要は、1月発行の周年記念特集『日宗連通信』にまとめて掲載し、ホームページでも公開している。なお、2月に開催した「創立70周年記念シンポジウム」については、平成28年度末現在、ホームページに要旨を掲載するために編集を進めているところである。

・ 「創立70周年記念式典・祝賀懇談会」の開催

日 時  平成28年4月14日(木)午前11時~午後1時

会 場  築地本願寺(東京都中央区築地)

記念式典:蓮華殿  午前11時~11時40分

・平和の祈り

・主催者挨拶 齋藤明聖理事長

・来賓祝辞

・感謝状贈呈

・提言 石井研士・國學院大學副学長、日本宗教連盟理事

祝賀懇談会:瑞鳳 正午~午後1時

・来賓祝辞

参加者  120名

 

イ. 宗教文化を振興するための宗教法人実務研修会等の推進 (B)

(ア) 文化庁並びに都道府県主催「平成28年度宗教法人実務研修会」への講師派遣と、評価企画会議等委員派遣の協力

宗教法人の適正な管理運営に資することを目的として宗務行政への各種協力を行い、これらの活動をとおして信教の自由の尊重と擁護、並びに、宗教文化の振興と普及に努めた。

・ 「平成28年度宗教法人実務研修会評価企画会議」へ事務局長と幹事を委員として派遣した。

・ 「平成28年度宗教法人実務研修会」各会場に講師として事務局長・幹事が出向し、「宗教法人の公益性」について講義を行った。(全9会場)

1)北海道・東北地区(10月27日、青森県・事務局長)

2)第1回関東甲信越静地区(9月8日、栃木県・幹事)

3)第2回関東甲信越静地区(11月17日、長野県・事務局長)

4)第1回近畿・中部地区(9月29日、岐阜県・幹事)

5)第2回近畿・中部地区(10月6日、奈良県・幹事)

6)第1回中国・四国地区(10月13日、香川県・幹事)

7)第2回中国・四国地区(11月1日、岡山県・幹事)

8)第1回九州地区(10月20日、福岡県・幹事)

9)第2回九州地区(11月10日、大分県・幹事)

(イ) 文化庁主催、平成28年度開催「宗教法人制度の運用等に関する調査研究の協力者会議」への協力者委員派遣の協力

・ 平成28年度に開催の「宗教法人制度の運用等に関する調査研究の協力者会議」の協力者として事務局長が出席した。

(ウ) 文化庁主催各種研修会への講師推薦協力

・ 文化庁主催「平成28年度都道府県宗教法人事務担当者研修会(認証事務・不活動宗教法人対策)」の講師推薦の協力を行った。

 

ウ. 宗教文化を振興するための協賛団体(教派神道連合会、全日本仏教会、日本キリスト教連合会、神社本庁、新日本宗教団体連合会)、並びに、関係諸団体との連絡・協議・調査研究等の実施 (C)

(ア) 協賛団体との連携協力による調査研究

・ 協賛団体との連携によって、宗教・宗派の垣根を越えて信教の自由の尊重と擁護、並びに、宗教文化の振興と普及を行っている。本年度は「平成28年熊本地震」災害復興支援についての協議と情報収集、及び、学習指導要領等の改正に伴う「宗教知識教育」、並びに、「宗教文化教育」の在り方の協議など、宗教を取りまく諸問題に関して意見交換や情報収集を行い、意見書等の取りまとめと行政への陳情を行った。

(イ) 関係諸団体及び、官庁との連携協力による調査研究

・ 公益財団法人全国教誨師連盟主催「全国教誨師連盟創立60周年記念大会(第37回全国教誨師大会)」に理事長が参列し、宗教教誨事業功労者12名に感謝状と記念品を贈呈した。

また、『教誨マニュアル』改定版編集に伴う巻頭寄せ書きについて全国教誨師連盟から依頼があり、6月に理事長の原稿を寄稿した。

なお、当年度は宗教教誨活動の研究の一環として、第5回宗教文化セミナーの講師の一人として宗教教誨師を迎え、実際の活動について講演いただくなかから現状の諸課題について研究し、広く一般にも活動を紹介する機会とした。講師は、全国教誨師連盟に推薦を依頼した。

・ 法務省主唱、第67回「社会を明るくする運動」について、協力団体として広報推進の協力を行った。

 

―――――――――――――――――――――――――

2. 講座・セミナー

(1) 宗教文化並びに信教の自由に関するシンポジウム及び講演等の開催

ア. 宗教文化セミナーの開催 (D)

(ア) 第5回宗教文化セミナーの開催

・ 様々な社会活動のなかでも、宗教者が担っている宗教教誨師、チャプレン、臨床宗教師に焦点を絞って、活動の実際を広く一般にも紹介しつつ現状の諸問題を考える場を提供することを目的として、セミナーを企画開催した。

毎事業年度、当連盟が功労者の表彰を行っている「宗教教誨師」は、守秘義務もあるため実際の活動内容は一般に知られていない。「教誨」とは、様々な理由から罪を犯して矯正施設に入っている人々に対して、民間の篤志の宗教者がそれぞれの教えに基づいて、一人ひとりのこころの葛藤に寄り添い、罪の自覚と反省を促しながら改善更生へと導く活動である。矯正施設では一人ひとりの信教の自由が尊重され、宗教行事に参加できるようになっており、要望があれば宗教教誨が提供される。罪を犯した人の社会復帰に寄り添う地道で大切な活動である。

また、人は病や死に直面したときに、こころや精神の痛み、いつかは訪れる「死」への恐怖などで混乱すると言われている。そういった心の痛みに寄り添い、精神的なケアを行うのが「チャプレン」や「臨床宗教師」の活動である。チャプレンはもともと海外を中心に、キリスト教の精神から医療現場のみならず学校や政府機関、軍隊などの施設に置かれ、人々のこころに寄り添う活動を行ってきたが、その活動は日本ではあまり知られていない。臨床宗教師については、東日本大震災の経験から故岡部健医師が提唱したもので、宗教各派を超えて活動する、日本人の宗教性にふさわしい新たな宗教者のあり方として、今後の活動に期待が持たれている。

国や行政では担うことができない、宗教教誨師、チャプレン、臨床宗教師のそれぞれの現場から、一人ひとりのこころに寄り添い、「いのち」を支える宗教者の社会活動について広く一般に紹介することを目的とした。一般、並びに、宗教関係者から多数の参加があった。

日 時  平成29年3月13日(月)午後1時30分~4時50分

会 場  聖路加国際病院本館2階 トイスラーホール(東京都中央区明石町)

テーマ 「宗教者が担う社会活動―宗教教誨師、チャプレン、臨床宗教師の現場から―」

講 演  講演I 「府中刑務所の教誨に付いて」

猿渡 昌盛 氏  府中刑務所所属教誨師、大國魂神社宮司

講演II 「臨床現場におけるスピリチュアルケア:チャプレンの視点から」

ケビン・シーバー 氏  聖路加国際大学キリスト教センター主任チャプレン・司祭

講演III 「公共空間における『臨床宗教師』の立ち位置」

鈴木 岩弓 氏  東北大学大学院文学研究科教授、実践宗教学寄附講座兼任教授

対 談  猿渡 昌盛 氏、ケビン・シーバー 氏、鈴木 岩弓 氏

[コーディネーター]

宍野 史生 氏  日本宗教連盟幹事、教派神道連合会理事

対象者 一般、並びに宗教関係者

参加者 77名

 

イ. その他、宗教文化並びに信教の自由に関するセミナー及びシンポジウム等 (E)

(ア)「創立70周年記念シンポジウム」の開催

・ 日本宗教連盟の創立70周年を記念して、情報システムや教育システム、オフィス機器等を手掛ける著名な企業と、医療系特定非営利活動法人のリーダーにそれぞれ登壇いただき、現代の宗教への期待や希望を込めて、さまざまな角度から「宗教への提言」を伺うことを目的としてシンポジウムを開催。宗教をめぐる社会の現状を知り、これから起こりうるさまざまな社会問題と宗教の持つ力について考えるきっかけとした。当日は、一般、並びに、宗教関係者から多数の参加があった。

日 程  平成29年2月18日(土)午後2時~4時50分

会 場  聖アンデレ教会(東京都港区芝公園)

テーマ  「宗教を現代に問う―宗教法人への提言」

講演I 「企業改革実践を通して感じた組織と人の在り方」

向井 眞一 氏  株式会社内田洋行顧問

講演II「私たちの中に折りたたまれる日本の心

―国際医療NGOジャパンハートの挑戦―」

吉岡 秀人 氏  医師、特定非営利活動法人ジャパンハート代表

鼎談  向井 眞一 氏、吉岡 秀人 氏

石井 研士 氏  國學院大學副学長、日本宗教連盟理事(コーディネーター)

参加者 85名

 

―――――――――――――――――――――――――

3. 広報活動

(1)ホームページによる宗教文化並びに信教の自由に関する情報の発信及び広報の推進

ア. ホームページによる情報発信

・ 信教の自由の尊重と擁護、並びに、宗教文化の振興と普及のため、各種活動に関する情報やセミナーの開催告知、事業活動等の概要についてホームページで公開し、広く一般へ情報を発信することに努めた。

今年度は、主に学習指導要領等の改正との関連で、宗教文化振興と信教の自由の尊重の観点から、公平公正な「宗教知識教育」や「宗教文化教育」の重要性について述べた意見書を提示し、広く一般にも考えるきっかけの一助となるよう努めた。

・ 機関紙『日宗連通信』を電子化してホームページで公開することで、創立70周年記念事業の報告や、当連盟の70年の足跡や事業活動について情報を広く一般に提供した。

(2) 機関紙『日宗連通信』による宗教文化並びに信教の自由に関する情報の発信

ア. 機関誌の編纂、刊行

・ 創立70周年記念特集『日宗連通信』の発行

平成28年度の機関誌『日宗連通信』の記事内容について、幹事会で企画を協議。例年より頁数を増やし、通常記事の他に、創立70周年記念事業の一環として、記念特集記事の掲載を企画した。第2回理事会で掲載内容を承認した。

<創立70周年記念特集記事内容>

・創立70周年記念式典・祝賀懇談会報告―来賓祝辞の紹介と「提言」

・日本宗教連盟略年表 七十年のあゆみ

・日宗連の事業紹介

・五団体の紹介(教派神道連合会、全日本仏教会、日本キリスト教連合会、

神社本庁、新日本宗教団体連合会)

<通常記事として>

・「次期学習指導要領等に向けたこれまでの審議のまとめ」に係るヒアリングの経緯と意見書全文掲載

・東日本大震災、並びに、平成28年熊本地震で被災した宗教法人に係る指定寄附金制度について

・平成28年の活動紹介

『日宗連通信』は関係諸団体を中心に配布し、また、ホームページでPDF版を公開することで、広く一般社会にも情報を提供した。

・ 平成28年度宗教法人実務研修会全9会場での配布資料として、『別刷・日宗連通信』を2000部作成し、研修会参加の宗教法人関係者を通して、一般にも情報を発信した。

 

―――――――――――――――――――――――――

4. その他、目的を達成するために必要な活動

(1) 関係諸団体及び、官庁等への協力

ア. 各種依頼への協力

・ 公益財団法人庭野平和財団主催・第33回庭野平和賞贈呈式に理事長が参列し祝辞。

・ 宗教法人神社本庁設立70周年記念式典に理事長が参列。

・ 厚生労働省主催・千鳥ヶ淵戦没者墓苑拝礼式に幹事が参列。

・ 新日本宗教青年会連盟主催・第51回戦争犠牲者慰霊並びに平和祈願式典に幹事が参列し献花。

・ 政府主催・全国戦没者追悼式に理事が参列し献花。

・ 千鳥ヶ淵戦没者墓苑奉仕会主催・秋季慰霊祭に事務局長が参列し献花。

・ 石川県宗教連盟主催「石川県宗教連盟結成70周年記念式典」が開催され、理事長代理として事務局長が参列し祝辞を述べ、宗教功労者18名を表彰。

・ 世界連邦日本宗教委員会主催・第38回世界連邦平和促進全国宗教者・信仰者福岡大会に協賛し、幹事が参列し祝辞。