平成30年度 年頭所感

平成30年度 年頭所感(平成31年1月)

「新年のご挨拶」

公益財団法人 日本宗教連盟 平成30年度理事長 田中 恆清

 

平成の御代最後の新年を迎え、ここに謹んで新春のお慶びを申し上げます。

本年は天皇陛下の御即位三十年を迎えると共に、四月末には、天皇陛下は御譲位され、五月一日には太子殿下が第百二十六代天皇として御即位されます。

さて、明年の二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向け、現在、官民問わず様々な準備が進められております。「オリンピック憲章」は、オリンピック開催国が併せて文化プログラムを実施するように定めています。政府や文化庁は、これを契機として、我が国の文化の一層の向上に向けた文化財の保護・活用や文化活動への支援、人材育成等の充実を目指して整備を進めています。

そうした中、昨年六月には「文化財保護法及び地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律」が成立しました。本年四月より同法は施行され、今後は、都道府県や市区町村といった地域社会が中心となり、文化財の保存や観光等の活用による継承といった取り組みが進められることになります。

文化財には、社寺などの建造物や美術工芸品など、宗教や信仰に根差したものが多数存在します。それは古来、宗教や信仰が私たちの生活に密接に関わる精神的支柱であったことを示しています。

現在、文化財を所有する宗教法人は小規模なところが多く、その保存・継承が人的にも経済的にも困難であるのが現状です。このたびの法改正で、社寺等が所有する文化財が地域社会の協力と見守りをいただきながら保存・継承していけるならば、小さな社寺の文化財の滅失・散逸は防げるかもしれません。

文化財を観光資源として過度に商用利用されることは避けねばなりませんが、文化財所有者の意見や意向が尊重された「保存のための活用」ならば、宗教や信仰を広め、その精神を未来に継承してゆく資産とすることができると考えます。

いま、オリンピックによって、世界から「日本の文化」に注目が集まっております。宗教や信仰に根差した文化財の価値の高さが国内外に再認識され、更に地域社会活性の一助となるならば素晴らしいことだといえます。

当連盟では、本年も信教の自由の尊重と擁護、宗教文化の振興、宗教文化の交流を目的とする諸活動を行ってまいります。

皆様には、より一層のご理解とご協力を賜りますようお願い申し上げ、新年のご挨拶といたします。

(神社本庁総長)