平成25年度 年頭所感

平成25年度 年頭所感(平成26年1月)

「新年を迎えて」

公益財団法人日本宗教連盟 平成25年度理事長 田中恆清


謹んで新春のお慶びを申し上げます。

旧年中は、本連盟の活動に格別の御高配を賜り、厚く御礼申し上げます。

さて、一昨年四月に日本宗教連盟が公益財団法人に移行してから早一年半が経過致しました。信教の自由と政教分離の精神のもとに宗教団体相互の連絡、宗教文化の振興を通して心豊かな社会の形成をめざし、さらに世界平和への貢献を目的に結成された本連盟が、公益財団法人としての活動を推進する中で、いかに「宗教の公益性」というものを対外的に発信し、社会に御理解を戴くか、協議を重ねて参りました。

昨年十二月には「第二回宗教法人の公益性に関するセミナー『震災復興と宗教』」を開催致しました。東日本大震災から二年半が過ぎ、神社や寺院、教会等は、それぞれの特性を活かして支援活動を実施しておりますが、被災地では人々の心の拠り所となる宗教施設も甚大な被害を受けており、その復興の在り方について様々な問題が山積しているとの現地からの報告がありました。新聞報道によると、「国や県からは、憲法の『政教分離』規定により、宗教施設には支援が出来ないとの見解が示され、国や自治体からの補助は期待できない。再建の為の費用は自ら調達するしかない。」といった半ばあきらめとも取れる宗教者の声も聞かれ、憲法に定める政教分離原則の解釈や運用上の誤解が、まだまだ根強く残っている現状が浮き彫りになりました。昨年はまた、国内外において、竜巻や突風、台風などの災害が多く発生した年でもあります。被災した皆様には心よりお見舞い申し上げますとともに、私共は、常に被災者に寄り添い、その心身のケアに尽力する宗教者の活動も、可能な限り支えて参りたいと存じます。

また、昨年十月には伊勢の神宮にて、二十年に一度の「神宮式年遷宮」遷御の儀が斎行されました。私も神社界に身を置く者の一人として奉仕する機会に恵まれましたが、午後八時、すべての明かりが消えた浄闇の中、粛々と、大御神が新しいお宮にお遷りになる御様子に、言い知れぬ思いが湧き上がってまいりました。遷宮によって全てを一新することで、大御神の更なる御光を戴き、日本の国全体の若返りと永遠の発展を目指すというこの祭りを言祝ぎ、伊勢の地を多くの人が詣でているさまは、日本という国の文化、伝統を見直し、宗教を心の拠り所として、再認識する人々が増えてきている証ではなかろうかと存じます。 こうした風潮の中で、私ども宗教者は、国民生活の安定と向上、世界の平和と繁栄のため、課せられた責任と役割を自覚し、愈々人類の福祉の増進に努めて行かなければならないものと存じます。 本年も日本宗教連盟の活動に一層の御理解と御協力を賜りますようお願い申し上げます。

(平成25年度『日宗連通信』より)