「福島復興再生基本方針」に関する意見書

平成24年9月27日

復興大臣  平野達男 様

東京都港区芝公園4-7-4明照会館内
公益財団法人  日本宗教連盟
理事長  芳 村 正 德

「福島復興再生基本方針」に関する意見書

 公益財団法人日本宗教連盟は、教派神道連合会・全日本仏教会・日本キリスト教連合会・神社本庁・新日本宗教団体連合会の5団体によって構成され、日本国憲法が規定する信教の自由の尊重と擁護及び政教分離の原則のもとに、宗教文化の振興をはかり、道義に基づく豊かな社会の形成に寄与し、もって世界平和の確立に貢献することを目的に活動しています。

さて、7月13日に閣議決定されました「福島復興再生基本方針」の意見公募手続に際して、当連盟から意見を提出しましたところ、貴庁より「一般的に、宗教そのものの観点から復興施策を講ずることについては、憲法第20条の規定を踏まえ、慎重な対応が必要と考えています。なお、地域の歴史的、伝統的な宗教施設等が、地域の文化、観光等の再生の観点から、復旧・復興の対象となることもありますが、これらは、あくまでも文化、観光等の再生の観点から結果的に対象となっているものです。」との見解が示されました。

貴庁の言われる「歴史的、伝統的な宗教施設等」や「文化、観光等の再生の観点」の定義が判然としませんが、仮に、歴史的・伝統的なものであって、文化・観光等の再生の観点が見出せなければ宗教施設等は対象外とのお考えであれば、憲法に定める政教分離原則の解釈を誤っており、宗教に対する差別、宗教法人や宗教団体に対する不利益な取扱いとも取れる見解であり、到底容認することは出来ません。

憲法20条第3項及び89条に定める政教分離原則の解釈については、昭和52年7月13日の津市地鎮祭訴訟最高裁判決において、
1 憲法の政教分離原則は国家が宗教的に中立であることを要求するものではあるが、国家が宗教とのかかわり合いをもつことを全く許さないとするものではなく、宗教とのかかわり合いをもたらす行為の目的及び効果にかんがみ、そのかかわり合いがわが国の社会的・文化的諸条件に照らし信教の自由の保障の確保という制度の根本目的との関係で相当とされる限度を超えるものと認められる場合にこれを許さないとするものである。
2 憲法20条3項禁止する宗教的活動とは、国及びその機関の活動で宗教とのかかわり合いをもつすべての行為を指すものではなく、当該行為の目的が宗教的意義をもち、その効果が特定の宗教に対する援助、助長、促進又は圧迫、干渉等になるような行為をいう。
との判断基準が示され、以降、政教関係訴訟はこの基準にそって判断がなされております。

更に、同判決は具体的に、「政教分離原則を完全に貫こうとすれば、かえって社会生活の各方面に不合理な事態を生ずることを免れないのであって、例えば、特定宗教と関係のある私立学校に対し一般の私立学校と同様な助成をしたり、文化財である神社、寺院の建築物や仏像等の維持保存のため国が宗教団体に補助金を支出したりすることも疑問とされるに至り、それが許されないということになれば、そこには、宗教と関係があることによる不利益な取扱い、すなわち宗教による差別が生ずることになりかねず、また例えば、刑務所等における教誨活動も、それがなんらかの宗教的色彩を帯びる限り一切許されないということになれば、かえって受刑者の信教の自由は著しく制約される結果を招くことにもなりかねないのである。」と言及しています。

また、国公立学校における宗教教育のあり方について教育基本法は、特定の宗教のための宗教教育その他宗教活動は行ってはならないと規定する一方で、宗教に関する一般的な教養及び宗教の社会生活における地位は教育上尊重されるべきと規定しています。

宗教は、人々の心のよりどころであり、祭りや民族芸能、社会事業やボランティア活動など、地域のコミュニティーの中で果たしてきた役割は誠に大きなものがあると存じます。今般の東日本大震災に際しても、犠牲者の慰霊や引取り手のない遺骨の管理、被災者や帰宅困難者の受け入れ、支援物資の中継や炊き出しなど、神社や寺院、教会等がそれぞれの特性を活かして支援活動を実施しました。

「原子力災害の被災者に十分に寄り添って、原子力災害からの福島の復興及び再生に関する施策の総合的な推進を図る」との基本方針のもと、住宅・医療・介護・福祉・教育・保育等の生活環境の整備が進められるのであれば、宗教法人や宗教団体の施設等も、宗教に関係するからとの理由で安易に対象外とされることのないよう、それこそ慎重な対応をお願い申し上げる次第です。

本件は、我が国の行政と宗教の根幹に関わる問題でありますので、改めて貴庁の御見解をお示し下さいますようお願い致します。

以 上

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